2009 Fiscal Year Annual Research Report
コルビノディスク型温度勾配を用いた角度分解熱電能測定による強相関電子系の研究
Project/Area Number |
21654048
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
谷口 弘三 Saitama University, 大学院・理工学研究科, 准教授 (50323374)
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Keywords | 有機物質 / 熱電能 / 角度依存性 / 新測定手法 |
Research Abstract |
一般に、電子物性は異方的である。特に、現代固体物理学の重要な研究課題である強相関電子系では、異方性が、そこで発現する新奇な現象に対して重要な役割を演じている。したがって、このような物質においては、異方性の決定は極めて重要であり、何らかの物理量を測定する際には、その異方性も評価しなければ真の情報を得たことにはならない。また逆に、物理量の異方性を決定すれば、対象としている物理現象のメカニズムに迫れるわけである。以上の要求から、本研究では、熱電能の面内異方性測定という新たな角度分解測定手法を提案した。この手法では、円柱座標における動径方向に温度勾配を発生させ、動径方向に生じた熱起電力を決定する。このことにより、熱電能の角度依存性が準連続的に抽出できるわけである。 現時点においてもすでに予備的成果が得られているが、さらに進んだ議論をするためには、解決しなければならない問題がいくつか存在する。まず、現状では、使用している結晶が真円ではなく、また、それとも関連し、電極配置が対称的ではない。このため、理想的な軸対称の温度勾配ではない可能性がある。この問題の対策として、パルスレーザー加工機により結晶を真円に加工するという方法を計画している。また、現状では室温でしか測定しておらず、当面は低温域への拡張が課題である。低温域では、途中の配線の熱起電力が大きくなるため、測定は、室温時より難しくなることが予想される。試行錯誤の末、この低温域への拡張を成功したいが、場合によっては、比熱の交流法のようにΔTを変動させることにより、試料からのシグナルを抽出することも計画している。
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