Research Abstract |
本挑戦的萌芽研究では,プロトン互変異性による物質の物理的・化学的性質に引き起こされる著しい変化を利用して大きな誘電性・導電性の変化を生じさせ,起こせれば,新しいタイプの耐久性に優れたソリッド・ステート高速光スイッチの作製の基礎作りを目標とした。特に,結晶構造解析とも対応させた詳細な研究,特にマイクロ波顕微鏡を用いた局所高周波伝導度測定を併用することにより,以前我々が発見した一次転移のメカニズムを明らかにし(b)さらに劇的な伝導特性・誘電特性を持つ物質を開発し(c)その物性を光で制御することを到達目標とした。 然るに,我々の研究も,前年度末に起こった震災の影響を少なからず受け,さらに加えて,我々の部局特有の事情ではあるが,大規模エアコン工事があり,前後3-4ヶ月研究をストップせざるを得なかった。このため,当初の目標には達しなかったが,以下のように,当初,計画したことを着実に進歩させた。 (1)プロトン移動高速光スイッチの開発を念頭おき,プロトン移動高速光スイッチの候補として,7-ヒドロキシキノリン類の光誘起分子間プロトン移動を検討したところ,低温ガラスマトリックス中で分子間プロトン移動にもとづく可逆的色変化が発現することを見出した.また,化合物によっては,固体中でも光誘起分子間プロトン移動が進行することを見出した. (2)マイクロ波顕微鏡の作製に着手した。高精度SPMコントローラーを導入し,ヘッド部分の設計を行った。本補助金による研究は本年度で終了であるが,次年度以降も継続し,当初の計画,すなわち,上記新規開発物質の局所伝導度観察,さらには光スイッチ化を成功させたい。
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