2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21654056
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
岡本 宏己 広島大学, 大学院・先端物質科学研究科, 教授 (40211809)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 清一 広島大学, 大学院・先端物質科学研究科, 助教 (70335719)
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Keywords | ナノビーム / エミッタンス / クーロン結晶 / レーザー冷却 / 低線量放射線 / 加速器 |
Research Abstract |
昨年度に引き続き、ドップラーレーザー冷却法によるクーロン結晶の生成および1次元紐状結晶(イオントラップの軸上に少数個のイオンが等間隔で整列した状態)の射出実験を実施した。結晶構造を維持したままイオンを引き出すことができれば、従来のマイクロビームを凌駕する、超高品質の"ナノビーム"生成が可能になる。単一イオンのピンポイント照射が実現できるため、放射線影響学上の基礎研究(たとえば、バイスタンダー効果や半導体デバイスに対するシングルイベント効果など)に格段の進歩をもたらすと期待される。 使用したイオン種はこれまで通り一価のカルシウム(^<40>Ca^+)で、現有の線形ポールトラップ中で極低温まで冷却後、端板電極に印加した電圧を高速でスイッチすることによりMCP検出器に向けて射出する。ロッド電極に与える高周波電圧の振幅は30V前後とし、周波数は2MHzに固定した。まず、MCP側の直流端板電圧を0.55nsecで0V(イオン閉じ込め時は0.5Vに設定)に落とす一方、逆側の端板電圧は20Vまで上げて1~4個程度のイオンで構成される1次元クーロン結晶の射出を試み、個々のイオンが等間隔でMCPに到達することを確認した。これは結晶の非破壊射出に成功したことを意味する。次に、逆側端板電圧の終値を数Vから120Vの範囲で振って同様の射出実験を行い、MCPまでの到達時間および隣接イオン時間間隔の変化を計測した。その結果、いずれのパラメータもスイッチ後の端板電圧を調整することにより制御できることがわかった。これらの実験データは分子動力学シミュレーションの結果とよく一致する。MCP到達時のイオン群の平均規格化エミッタンスを3次元シミュレーションにより評価したところ、10^<-13>~10<-12>mという値を得た。これは一般的なイオン源が生成する重粒子線のエミッタンスよりも6桁程度小さい値である。
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Research Products
(4 results)