Research Abstract |
原始惑星系降着円盤ガスを記述する基礎方程式の定式化を検討し、そこへ地球流体力学的諸概念の適用可能性を検討すること、そして、非軸対称擾乱の考察の基本となる軸対称場の性質を調べることを行うことが本研究課題の最終目標である。 本年度は,研究代表者,分担者全員が8月16日に神戸大学惑星科学研究センターに集まり,軸対称循環の基本場について見当を行った.軸対称循環の基本場が満足するべき条件(遠心力,圧力傾度力,重力のバランス)や基本場の安定性の十分条件は,地球流体力学ではCharney(1973)で詳しく議論されており,先ずこのレビューを行った.そして,原始惑星系降着円盤ガスの研究では,地球流体力学で知られているバランスが満足されていることがわかった.次の研究の発展の方向として,傾圧不安定による渦の生成について検討することを確認し,原始惑星系降着円盤ガスの傾圧不安定問題を扱った論文の調査を始めた. そのほか,以下の研究を行い成果を公表した. 原始惑星系円盤におけるガスの電離度に関する研究:原始惑星系円盤において,円盤ガスがどの程度電離し磁場と結合するかが,円盤ガスの磁気乱流の保持において重要である.円盤ガスの電離を阻害するのが,ダスト粒子表面での電荷再結合である.この効果を取り入れながら,ダスト粒子の合体成長を解くと,ダスト粒子は負に帯電しお互いに反発しあうことにより,その成長が著しく妨げられることが分かった.この結果から,ダスト表面での再結合の効率は減らないので,円盤の電離度も低いままに抑えられ,磁気乱流の成長も阻害される可能性が示された.これにより,ダストの成長が,円盤ガスの乱流状態,および乱流降着円盤としての進化に対して及ぼす多大な影響を議論できるようになった. また、純流体力学的な研究として非一様な渦度分布を持つ楕円渦が軸対称化する過程において,フィラメントが果たす役割を数値実験を通じて明らかにした.
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