| Research Abstract |
三価ランタニド化合物の熱力学量に認められるランタニド四組効果の意味を「拡張ヨルゲンセン理論式」により明確にすることが,本研究課題の主題である.本研究代表者は,ΔHに見られる四組効果に対する「拡張ヨルゲンセン理論式」(Kawabe,1992)と同質同形系列を成すLn(III)硫酸エチル9水塩の溶解反応のΔH,ΔS,ΔGのデータから,四組効果はΔS,ΔGにも見出されることを示し,三価水和Ln(III)イオンの水和状態変化の熱力量も推定した(1999a,b).この結果を基礎に,本研究では三価ランタニド・キレート錯体生成反応のΔH,ΔS,ΔGのデータを解析することで,ΔHのみならずΔS,ΔGにもランタニド四組効果が認められるを示す.第一段の研究結果として,
1)三価ランタニド・EDTA錯体生成定数(ΔG)に認められるGdブレイクと四組効果,
2)三価ランタニド・DTPA錯体生成反応のΔH,ΔSが示す上に凸な四組効果と,ΔGデータの下に凸な四組効果,
3)三価ランタニド・DTPA錯体生成反応のΔH,ΔS,ΔGに見られるイオン強度変化に由来する四組効果,
について三編の英語論文を取りまとめ,これらをGeochem.J.(日本地球化学会の英文誌)に3月に投稿した.これら三編は現在査読中である.
三価ランタニド・DTPAキレート錯体は,Ln(III)硫酸エチル9水塩と類似し,同質同形系列をなすと結論できる.その生成反応のΔH,ΔS,ΔGは,ΔG=ΔH-TΔSの熱力学関係式を満たし,かつ,個々の熱力学量の系列変化は「拡張したヨルゲンセン理論式(Kawabe,1992)」に適合することを示した.4番目の論文として,
4)ランタニド・EDTA錯体生成反応のΔG,ΔH,ΔSの系列変化全てについての議論
を扱った英文原稿も取りまとめた.しかし,その投稿は1)の第一論文の採択後を予定している.1),2),3),4)の各論文は,代表的なランタニド・キレート錯体の生成反応について,ランタニド四組効果から再考した結果であり,その学問的意義は大きいと考える.難容性塩/熱水の反応系とケイ酸塩鉱物/メルト系の実験的分配係数データ取得のために,初年度経費により簡易反応容器と電気炉を購入した.分配係数実験データ取得のための準備作業を終えたので,次年度から具体的データを取得出来る.
|
