2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21655001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
武田 定 Hokkaido University, 大学院・理学研究院, 教授 (00155011)
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Keywords | 結晶内プロトンポンプ / プロトン移動 / ラチェット機構 / 誘電特性 / 固体NMR |
Research Abstract |
非対称な一次元チャンネル中に陽イオン(X)および水分子が一次元に配列した構造を持つ一連の物質{(X)_2[Fe^<III>_2(ox)_2(μ-O)H_2O]_n(X=Na,NH_4,MeNH_3および(X)_2=(EtNH_3)(H_3O))を合成し、粉末成形ペレットについて誘電緩和およびインピーダンス測定を行った。複素誘電率はCole-Coleプロットでよく再現でき、緩和時間は物質により多少異なるが294Kで1~20μsであることを見出し、また活性化エネルギーは60~66kJ/molとあまり物質に依存しないことを見出した。これはいずれの物質でも水分子やプロトンの動きが誘電応答の原因であるためと考えられる。 さらに室温(294K)における複素インピーダンスの相対湿度依存性を測定した結果、複素インピーダンスのCole-Coleプロットから求められる電気抵抗率は相対湿度が0%から大きくなるにつれて急激に小さくなることを見出した。熱重量分析の結果から、相対湿度0%では室温でもチャンネル中の水分子が一部抜けることが観測され、これが低湿度状態での電気抵抗の増大をもたらすと考えられる。さらに室温で相対湿度60%でも電気抵抗率は10~35kΩcmと極めて小さいことも見出した。 X=NH_4の物質の重水素化物について、固体重水素核NMRスペクトルは極めて鋭く、アンモニウムイオンも水分子もチャンネル内で大きな熱運動をしていることを確認した。今後、外部電圧変調によりプロトンを一つの向きへ運ぶ現象の検出を試み、その条件の探究を進めていく。
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