2009 Fiscal Year Annual Research Report
タンパク質活性部位近傍構造の部位選択的ダイナミクス観測法の開発
Project/Area Number |
21655006
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
水谷 泰久 Osaka University, 大学院・理学研究科, 教授 (60270469)
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Keywords | ラマン分光法 / 生物物理 / 時間分解分光法 |
Research Abstract |
(1)ヘムタンパク質に対するハイパー共鳴ラマン測定法の確立 ハイパー共鳴ラマン散乱は、高次の光学過程であるため、その強度は微弱であり、迷光の影響を受けやすい。そこで迷光をできるだけ抑え、かっ高感度の測定ができるよう、リトロープリズムを用いたフィルター分光器を製作した。これを現有のラマン測定用の分光器に取り付け、ヘムタンパク質のハイパー共鳴ラマンスペクトルを高いS/N比で測定できるようにした。また、試料セルの形状を工夫したほか、レーザーパワー、フォトンフラックスを最適化し、タンパク質試料に損傷を及ぼさない測定条件を求めた。測定したハイパー共鳴ラマンスペクトルのバンド強度パターンを解析し、共鳴ラマンスペクトルのものと比較することによって、どのような電子励起状態がハイパー共鳴ラマン散乱の2光子励起過程に関わっているかを調べた。 (2)種々のタンパク質の測定:構造-スペクトル相関の解明 上記の測定装置を用いて、種々のヘムタンパク質およびモデル化合物の測定を行った。ヘムタンパク質とモデル化合物とのスペクトルを比較することにより、ヘムに由来するラマンバンドを帰属した。ヘムに由来するハイパー共鳴ラマンバンドは、ヘムの共鳴ラマンスペクトルのものとは大きく異なった。これは振電相互作用型の共鳴増大機構が働いていることを示している。帰属されたバンドの対称性を解析したところ、D4h対称からの部分的な崩れによって、D4h対称では不活性なラマンバンドもいくつか観測されることがわかった。タンパク質の間でスペクトルを比較するともに、各タンパク質に対しても、ヘムの酸化状態、配位状態の異なる種のスペクトルを比較した。その結果、共鳴ラマンスペクトルでは観測されない、ハイパー共鳴ラマンスペクトルにのみ観測されるヘムの酸化状態、配位状態のマーカーバンドを新たに見出した。
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