2009 Fiscal Year Annual Research Report
二重結合解離制御に基づくケイ素π電子系化合物の合成
Project/Area Number |
21655010
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
岩本 武明 Tohoku University, 大学院・理学研究科, 教授 (70302081)
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Keywords | ジシレン / 二重結合 / 結合解離 / シレン(シラエテン) / イソシアニド / X線結晶構造解析 |
Research Abstract |
本研究では、ケイ素-ケイ素二重結合化合物(ジシレン)のケイ素-ケイ素二重結合の解離を鍵とした新たな不飽和ケイ素化合物の合成法の開拓を目的としている。まず、ケイ素-ケイ素二重結合解離反応の開拓を目的として、ジシレンとLewis塩基との反応を検討した。先に我々が合成したトリアルキルアントリルジシレン1に対して、アリールイソシアニドを作用させたところ、[2+1]付加体であるアザメチレンジシラシクロプロパン2を与えた。さらにこの化合物3は分子内1,3-シリル転位を伴い熱異性化し、三員環構造を持つシレン(ケイ素-炭素二重結合化合物)であるシラアジリジン3を収率よく与えた。化合物2および3はどちらも空気に不安定な結晶として単離し、構造をX線構造解析で明らかにした。化合物3は三員環骨格と環外ケイ素-炭素二重結合をもつシラエテンとして初めての化合物である。単結晶中ケイ素-炭素二重結合距離は単結晶中環内の窒素回りはほぼ平面であった。一般にジアジリンの環内窒素回りはピラミッド化していることが知られているが、これとは対照的な結果である。これは窒素と結合している電子供与性置換基であるシリル基の電子的効果によるものと推定された。ジシレンとイソシアニドとの反応で[2+1]付加体を与えることは知られているが、シラアジリジンに異性化する反応はこれまでにない反応であり、形式的にケイ素-ケイ素二重結合が解離した化合物と捉えられる。同様な反応はトルアルキルフェナントリルジシレンでも観測された。
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