Research Abstract |
平成22年度の検討の結果,安定有機ビラジカル2a^<・・>(R=H)および2b^<・・>(R=C_8H_<17>)の合成ルートがほぼ明らかになった.これを受け,平成23年度は以下の実験(1)~(7)を検討した. (1)基質合成平成22年度の方法を参考に,さらなる効率化を行った. (2)光化学的挙動,光物理学的挙動の解明溶液および結晶での安定性を中心に,光化学的挙動を検討した.その結果,特に2a^<・・>は近赤外領域までにおよぶ長波長部に吸収があることが判った.一方,発光は弱いことがわかり,2a^<・・>がビラジカル構造ではないことが示唆された. (3)電気化学的挙動の解明サイクリックボルタンメトリー法を用いて,2a^<・・>の酸化還元特性と安定性を評価した.その結果,酸化還元電位は有機化合物としてはいずれも低いものの,有機ラジカルとしては高く,この実験でも2a^<・・>がビラジカル構造ではないことが示唆された. (4)γ線およびX線誘起熱発光有機ELと同様な電荷再結合による機構で発光するγ線誘起熱発光とX線誘起熱発光の検討を行ったが,熱発光性はほとんど確認されなかった. (50X線結晶構造解析とESR測定2a^<・・>のX線結晶構造解析を試みたが,良い結晶が得られず,実験的に結晶中の分子構造を明らかにすることはできなかった.一方,ESR測定で強いシグナルが観測されることはなく,この実験でも2a^<・・>がビラジカル構造ではないことが示唆された. (6)量子化学計算密度汎関数理論法による2a^<・・>の分子構造と電子構造を明らかにした.その結果,2a^<・・>は閉殻構造をとることが示唆された. (7)「有機ラジカルEL」の作成と特性評価2a^<・・>については,発光性がなく有機ラジカルELへの展開は叶わなかったが,2a^<・・>は有機電界効果トランジスタ(OFET)などに使われる有機半導体としての性能を有することが分かり,その基礎特性評価を行った.
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