2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21655045
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
吉澤 篤 Hirosaki University, 大学院・理工学研究科, 教授 (30322928)
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Keywords | 液晶 / 分子認識 / 生理活性 / 癌 / 細胞・組織 |
Research Abstract |
親水基と疎水基からなる両親媒性液晶を合成し、その液晶性と腫瘍細胞の増殖抑制に及ぼす効果を調べた。腫瘍細胞としてヒト肺がん細胞A549と慢性骨髄性白血病細胞株K562を使用した。比較のため正常細胞である繊維芽細胞WI-38に対して細胞増殖抑制を調べた。そのメカニズムを検討するために細胞周期の測定とウエスタンプロットを行った。その結果、以下の成果が得られた。 1.側鎖末端に1級水酸基を持ち、側鎖の長さを変えたシアノビフェニル誘導において、ネマチック液晶相の温度幅が最も広い化合物が、A549に対して最も強い細胞増殖抑制効果を示した。細胞周期を調べたところ、増殖抑制はG1期からS期への進行が遅くなる、即ちアポトーシス(個体をより良い状態に保つために引き起こされる調節された細胞の自殺)の誘導ではなく、DNAの合成阻害によるものであることがわかった。 2.1級水酸基を持つシアノビフェニル誘導体は腫瘍細胞A549の増殖は抑制したが、正常細胞WI-38には作用しなかった。一方、2級水酸基を持つものではA549とWI38両者の増殖を抑制した。1級水酸基を持つ化合物は正常細胞と腫瘍細胞を識別していることが示唆される。 3.液晶形成基を持つ化合物が白血病細胞株K562の増殖抑制に及ぼす影響を調べたところ、ピリミジン環とフェノール性水酸基を持つ3環化合物が濃度7μMで細胞増殖を抑制した。細胞周期の測定ではコントロールと差がみられなかった。そこでウエスタンプロットにより、この化合物が誘起するシグナル伝達を調べたところ、細胞増殖抑制がアポトーシスによるものであることがわかった。液晶性を調べたところ、この化合物はリオトロピック液晶を発現した。 以上から液晶性と抗腫瘍効果に相関があることを見つけた。また、液晶化合物により抗がん作用にとって望ましいアポトーシスを誘導できることが示された。
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