Research Abstract |
本年度は本研究の最終年度として,離散可積分系の理論において不均一格子上の離散可積分系の理論を構築し,それを応用して可変ステップ制御を組み込んだ離散曲線のダイナミクスと計算アルゴリズムを実装した.特に,ユークリッド平面上において,離散曲線のsemi-discretem KdV方程式で記述される連続的運動,およびdiscrete mKdV方程式で記述される離散的運動とそのBacklund変換を定式化し,さらにτ函数を用いて運動の統一的な明示公式を与えた.さらに,それらのmKdV方程式で記述される連続曲線の運動への極限を議論し,理論の正当性を確立した. また,Wadati-Konno-Ichikawa elastic bedm (WKI)方程式やDym方程式などループソリトンを許容するソリトン方程式は,通常のソリトン解を許容する方程式との間にホドグラフ変換で結ばれる関係があることが知られていた.本研究では上記の平面曲線の運動理論を応用することで,ホドグラフ変換に対して明確な幾何学的意味を与え,それが曲線の運動のオイラー・ラグランジュ変換に他ならないことを示した.このことを応用し,WKI, Dym, short pulse方程式に対して不均一格子上でのホドグラフ変換の離散化を定式化し,それらの方程式の離散化および半離散化を行った.得られた(微分-)差分方程式は,格子間隔に可変ステップ制御を組み込んだ形をしており,元の微分方程式の高精度で安定な数値スキームとなっている.特にshort pulse方程式は光ファイバー中を伝播する極短波長の光ソリトンを記述す-る方程式として知られており,今後の応用が期待される. 副産物として,クライン幾何の一つである相似幾何におけるBurgers方程式で記述される曲線の運動の離散化を定式化し,より一般的な対称性の下での理論展開への布石を打った.また,semi-discrete mKdV方程式の一般化であるHirota-Satsumaの非線形ネットワーク方程式の背後の階層構造を上記の結果を応用して解明し,離散可積分系の裾野を広げた.
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