2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21656031
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
北村 隆行 Kyoto University, 工学研究科, 教授 (20169882)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
澄川 貴志 京都大学, 工学研究科, 講師 (80403989)
嶋田 隆広 京都大学, 工学研究科, 助教 (20534259)
|
Keywords | 非線形局在振動 / カーボンナノチューブ / 破壊 / 分子動力学 / 非線形相互作用 / エネルギー局在 / 欠陥 / 原子構造体 |
Research Abstract |
均一な直管カーボンナノチューブ(CNT)に大きな引張りひずみを負荷すると、局所に五員環と七員環から成るStone-Wales(SW) 欠陥が導入される。この構造変化は、CNTの電気的機能喪失をもたらすものであるが、その欠陥発生箇所の予測は不可能とされてきた。一方、非線形局在振動(ILM: Intrinsic Localized Mode)は、局所で振幅の大きい振動が継続する非線形離散システムに特有の現象であり、近年、我々は原子構造体中でILMが存在し得ることを初めて示した。ILMは、構造不均一(例えば、き裂)がない場合にも局所的な運動エネルギーの集中を引き起こす力学現象であり、局所からの欠陥生成等の構造的不安定を誘発すると考えられる。本研究では、分子動力学法によるCNTのひずみ負荷シミュレーションを行い、非線形局在振動(ILM)の特性を解明するとともに、Stone Wales(SW)欠陥の生成メカニズムとの関連性を明らかにすることを目的とする。 初年度である本年は、まず分子動力学計算プログラムを改良すると同時に、導入した計算機システムの最適化を実施し、計算実行速度の向上を行った。この計算環境を用いて、CNT中のILMの基礎的な振動特性とその励起メカニズムを解明することを目的とし、カイラリティの異なる複数のCNTについて分子動力学解析を実施した。その結果、特定のカイラリティのCNTではILMが励起し得るが、他ではILMが生じないこと、すなわち、構造依存性があることが明らかになった。この原因を特定するため、各CNT中の原子間相互作用の非線形性を評価したところ、非線形性が高いCNTほど単位長さあたりに励起するILMの数が多く、高い振動数を有することが明らかになった。一方、ILMの励起しないCNTではこの非線形性が小さい。すなわち、CNT中でのILMの励起は、炭素原子間の非線形相互作用によって支配されることを示した。なお、本成果は非線形現象を扱う国際学術誌Physica Dに掲載済みである。また、上で得られた結果を元に、次年度行うILMからのSW欠陥生成現象の解析モデルを選定・作成し、次年度へ向けての準備を行った。
|