Research Abstract |
近年,ナノ・マイクロスケールの物理化学に関連する基礎研究が進み,ナノファブリケーションが,工学の基本的な横断的技術として重要になりつつある.本申請の目的に従い,平成23年度は,平成21~22年度に実施した,カンチレバーによる微小粒子の,機械的パラメトリック共振による操作の可能性の結果,MEMS共振器の振動モードの検証と,その共振切り替え制御の検討,及びマクロなパラメトリック振子を用いた,振動からエネルギーを回収する機構のメカニズムに基づき,MEMSにおけるラチェット機構の開発が,これらの研究成果を適用した新しい機構の開発につながるとの結論に至った.そのため,ラチェット機構を結合MEMS共振器で実現すると同時に,局在モードの切り替えを実現する制御法,およびその実現に関して数値的および実験的に検討を進めた.その結果,平成22年度に製作した,ヒステリシス特性を有する非線形MEMS共振器を用いて,MEMS共振メモリの開発に着手した. MEMS共振メモリは,その振動モードを保存状態とするメモリである.本研究では,特にその読み出し,書き込みの実現が,本研究課題がこれまでに達成してきた成果の適用により可能となることを明らかにし,その可能性を数値的および実験的に示した.MEMSメモリの状態測定系は,従来工学測定が主として用いられ来たが,メモリ状態への作用が生じるなどの問題があることから,MEMS共振器の対称構造を考慮した駆動系による差動,セルフセンシングが適することを示した.また,平成22年度に提案した制御手法に,変位測定の結果を適用し,メモリの状態書き換えが可能であることを初めて示した. こられの結果により,本申請課題が目指すマイクロ機構の操作とエネルギー収集だけでなく,エネルギーを振動モードの切り替えにより一方向に伝搬する機構,すなわちラチェット機構の開発に繋げられることが明らかとなった.さらにその振動を利用することにより,ナノ・マイクロ機構のアクチュエータ開発にもつながる成果を得ることができた.
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