2009 Fiscal Year Annual Research Report
長距離通学の実態把握と放課後の活動拠点構築に関する研究
Project/Area Number |
21656142
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西出 和彦 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 教授 (80143379)
|
Keywords | 都市計画・建築計画 |
Research Abstract |
はじめに、長距離通学の前提となる統廃合の現状に関する統計分析から、調査方針の検討を行った。第二次ベビーブーム以降、児童の減少は続いているものの、2008年度の一校あたりの児童は316人を保っており統廃合に直結するとは言い難い。統廃合の必要性は基礎自治体ほどの範囲に焦点をあてて初めて顕在化し、その形態は、児童の分布が著しく偏る「偏在」と、単純に児童が減少する「収縮」の2つに大分されることを示した。 「偏在」は東京をはじめとする人口密集地域で見られ、通学区域内の児童が他校へ通学することが原因である。特定の小学校のみが小規模化することになり、隣接する小学校と比べて児童が半数にも満たないといった極端な偏りも珍しくない。2009年度の江東区と前橋市における選択制見直しは対策の代表例ととらえられている。しかし今回、選択制を実施していない文京区でも指定校変更制度による同様の「偏在」を明らかにした。これは小学校を選んで通うことが浸透していることを裏付けるもので、長距離通学が受け入れられる土壌が整いつつあることを示すものと言える。 他方、市街地を離れるにつれ「収縮」が見られようになる。八戸市・中沢中学校区では2003年に1校が廃校となり、統合校の児童は一部がバス通学を行っている。それでも存続している3校中2校が複式学級を編成する、正に少子化が進行中の地域である。こうした状況のもと、学習環境を保全する方策として、3校の児童が1校に集まり、授業や部活を合同で行う小小連携活動が試みられている。教育課程の充実と交友関係の拡大の点から統廃合に相応する効果を期するもので、3校の教頭先生へのヒアリングでは、活動が一定の成果を上げ、保護者の賛同も得ていることが強調された。長距離通学と徒歩通学が混在し、日常的な生活の場は3校を跨いでシステマチックに拡大する点で、きわめて興味深い事例となっている。
|