2009 Fiscal Year Annual Research Report
高い転移温度を示すスーパースピングラス薄膜の創製と脳型メモリーへの応用
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21656163
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田中 勝久 Kyoto University, 工学研究科, 教授 (80188292)
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Keywords | スーパースピングラス / 薄膜 / フェライト / 磁気転移 / 脳型メモリー / スピンダイナミクス / 非線形磁化率 / メスバウアー分光 |
Research Abstract |
スピングラスめ理論的モデルは脳の連想記憶の機構との類似性が指摘されて大きな反響を呼び、その後ニューラルネットワークへ応用されて情報工学の領域で大きな成功を収めている。一方、逆にスピングラスを利用して脳の連想記憶に相当する系を確立し、新しいメモリー材料を構築しようとする試みはほとんど見られない。これは、これまでに知られているスピングラスの磁気転移温度が数K~数十K程度ときわめて低いことが原因の一つとなっていると思われる。このような現状に対して、研究代表者はすでに不規則亜鉛フェライトにおいて室温以上でスーパースピングラス的挙動が見られることを明らかにしている。同様の現象は他の酸化物でも期待できる。また、スーパースピングラスの起源が結晶構造中に存在する磁気クラスターによるものか、薄膜の微視的形状によるものかは不明であり、これを明らかにすることは、高温でスーパースピングラス相を安定化する機構を明確にする上で重要である。本研究では酸化物磁性体薄膜を気相法により合成し、磁気的性質を測定してスーパースピングラス相の存在を実証する。本年度は、パルスレーザー堆積法で作製した非晶質EuZrO_3薄膜が約8Kで強磁性転移したあと、さらに低温でリエントラントスピングラス相に転移することを見いだした。特に、交流磁化率の周波数依存性から明確なスピングラス転移を確認した。高分解能電子顕微鏡観察、内部転換電子メスバウアー分光を用いた構造解析も行い、得られた薄膜が非晶質であり、ユウロピウムはほとんどすべてがEu^2+の状態であることを明らかにした。アモルファス合金と異なり、非晶質酸化物で強磁性を示す例はめずらしく、特にEuZrO_3系は可視域でも比較的透明であることから、磁気光学材料への展開も考えられる。
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Research Products
(3 results)