2009 Fiscal Year Annual Research Report
大規模量子計算に基づく陽電子消滅法シミュレータの開発とナノ細孔構造解析への応用
Project/Area Number |
21656197
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高羽 洋充 Tohoku University, 大学院・工学研究科, 准教授 (80302769)
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Keywords | 陽電子消滅法 / ポジトロン・ポジトロニウム / 計算化学 / 電子密度分布 / 分離膜 / 経路積分モンテカルロ法 / 陽電子寿命減衰曲線 / ミクロ細孔 |
Research Abstract |
本年度は、研究目的である陽電子消滅法シミュレータの開発について以下の成果を得た。 (1)新規な電子密度分布の高速量子計算モジュール:申請者はこれまで開発してきた高速化量子計算手法シミュレータをベースに、電子密度分布を高速に計算するモジュールを開発した。プログラムではまず、与えられた原子配置から分子軌道を計算し、その軌道情報から、三次元空間の電子密度の三次元マップを計算する。三次元マップは、0.2Å程度メッシュごとの電子密度情報を考慮し、その値を外部ファイルに出力する。(2)電子密度分布から細孔分布を可視化して容積を計算するモジュール:上記から算出される電子密度マップデータから、不定形な細孔を抽出し、細孔容積を算出できるプログラムを作成した。さらに、細孔容積を計算し、また、細孔形状を可視化できる、グラフィックツールも開発した。(3)陽電子ダイナミクスの計算モジュール:陽電子のような量子粒子の挙動を解くための経路積分モンテカルロ法プログラムを開発した。計算には陽電子と相互作用する電子密度分布が必要であるが、本シミュレータでは(1)によって"原子配置から正確に計算された"電子密度分布を利用することで、汎用性のあるシミュレータを構築した。(4)陽電子寿命曲線計算および細孔径分布計算モジュール:陽電子のpick-off減衰速度を、経路積分モンテカルロ法から求められた陽電子密度の空間分布から見積もるプログラムを作成した。さらに球形近似モデルを適用して細孔径分布を求めることができる。これにより陽電子消滅法寿命曲線が算出できるようになった。 平成22年度は上記シミュレータの改良と実証試験を行う予定である。
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