Research Abstract |
本研究の目的は,プラズマCVD(PECVD)法によるシリカ膜の創製であり,その製膜技術を確立するとともに,気相系分離に応用することを最終目的とする。PECVD法によるシリカ膜は半導体製造プロセスでの薄膜製膜では報告例があるものの,申請者の知る限り分離膜として応用した例は無い。作製したシリカ膜は,熱CVD法と同様にアモルファス構造となっており,水素やヘリウムなどの小さな分子のみが透過できる分子篩膜となっていることが期待される。本研究では,まず多孔質支持体の上に,PECVDシリカ層を形成する必要があり,分子径の異なる気体を膜透過させることで製膜したシリカ膜細孔径を評価した。以下を本研究の研究実績とする。 (1)PECVD製膜装置の開発:プラズマCVD装置は製膜原料供給部,プラズマ製膜部,真空部に大別される。ArあるいはO_2でスイープすることで,Hexamethyldisiloxane (HMDS)を製膜部に供給した。製膜部は周波数13.56MHz高周波電源で外部コイル低温プラズマを発生させ,製膜原料を励起させる。反応圧力10-100Paでプラズマ励起された珪素原料は,拡散および多孔質支持体2次側(1-10Pa)への強制対流に同伴されて,膜細孔内部および表面に沈着すると考えられる。 (2)1-step製膜:α-アルミナ多孔質管(細孔径150nm)を支持体として用い,TiO_2中間層を作製した.キャリアガスとしてArを用いたPECVD(Ar-CVD)では,透過率は経時的に減少し約10minで定常に達した。He/SF_6およびHe/N_2選択性は次第に向上し,それぞれ200および10程度で定常値に達し,カーボン/シリカ複合膜のPECVD製膜が確認された.一方,キャリアガスをO_2としたO_2-CVDでは,気体透過率は減少したことから薄膜形成が確認されたものの,気体選択性は向上しなかった。 (3)2-step製膜:Ar-CVDに引き続きO_2-CVDを行う2-step法製膜を行なったところ,He/SF_6およびHe/N_2選択性は大幅に向上することを見出した。Ar-CVD10minとO_2-CVD5minの場合,He/SF_6およびHe/N_2選択性はそれぞれ27,000および7,800にも達した。これはAr-CVDによりピンホールの無いカーボン/シリカ複合膜がプラズマ重合製膜され,その後のO_2-CVDでカーボン/シリカ複合膜がより無機化されたために,気体選択性が大幅に向上したものと推察される。
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