2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21656217
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
片倉 啓雄 関西大学, 化学生命工学部, 教授 (50263207)
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Keywords | 乳酸菌 / 酵母 / 共生 / 接着 / DnaK / セルロース / マンナン / ムチン |
Research Abstract |
乳酸菌が自らが生産する乳酸のストレスを感じると、それを緩和してくれる酵母に接着し、より有利な環境を作り出すため、自身と酵母を包み込む多糖を生産する、という作業仮説を検証した。 Lactobacillus casei ATCC334株とSaccharomyces cerevisiae IFO0216株を,脱脂粉乳培地を用いて30℃で共培養し、酵母と接着した乳酸菌の遺伝子発現をDNAマイクロアレイを用いて解析したところ、機能未知の膜タンパク質が多数誘導されており、細胞外多糖の生合成に関与すると推定されるタンパク質の発現が高まっていた。また、共培養によってATCC334株の細胞外多糖生産も高まっていおり、仮説が裏づけられた。 Lactococcus lactis IL1403株のDnaKにHis-tagを付与して大腸菌で発現させた。精製したDnaKは、マンナン、酵母、乳酸菌に対して親和性をもち、0.1mg/ml以上の濃度では乳酸菌と酵母を凝集させた。また、ムチン、セルロース、キチン、デンプンに対して、それぞれ、5.1(+/-)0.9、2.7(+/-)0.9、1.1(+/-)0.3、0.2(+/-)0.06 x 10E6 1/Mの吸着定数を有していた。乳酸菌はいわゆる善玉細菌であり、腸の蠕動運動に逆らって定着するには、腸壁に接着する必要があり、これにはDnaKなどの乳酸菌表層のタンパク質が接着タンパク質としての役割を担っていると考えられる。同時に、DnaKがセルロース、キチン、デンプンなど食物繊維に対しても親和性をもつことは、腸内細菌の定着を議論する際には、食物繊維との相互作用も考慮しなければならないことを示している。
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