2010 Fiscal Year Annual Research Report
初代肝細胞の浮遊培養技術の創出による新規な細胞機能評価法の開発
Project/Area Number |
21656218
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
井嶋 博之 九州大学, 大学院・工学研究院, 准教授 (10274515)
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Keywords | 初代肝細胞 / 非接着浮遊培養 / 細胞機能評価 / 単一細胞培養 / PEG-GRGDS / 細胞骨格 / 薬物代謝 / アルブミン合成 |
Research Abstract |
付着依存性である肝細胞の機能性培養技術は創薬における薬物代謝評価など様々な応用が期待される重要な技術である。本研究では細胞接着阻害効果を有するポリエチレングリコールと細胞接着性を有するアルギニン-グリシン-アスパラギン酸配列からなる新規培養基材(PEG-GRGDS)ならびにそれを用いた初代ラット肝細胞の非接着単一細胞培養技術の開発研究を行っている。画像解析によりPEG-GRGDSを用いることによる細胞凝集阻害効果の定量的有意性を示した。非接着状態で単一細胞培養すると培養1日目には通常全ての肝細胞が死滅しているが、PEG-GRGDSを用いた本培養系では半数の肝細胞が良好に生存していた。さらに、本培養系ではエトキシレゾルフィン脱エチル化反応(EROD活性)における細胞間のばらつきはほとんど無く、細胞機能評価を目的とした初代ラット肝細胞の非接着単一細胞培養技術の優位性が示された。対照的に、死細胞のEROD活性は生細胞が有する活性には及ばないものの、大きくばらついていた。その際、死細胞におけるエステラーゼ活性とEROD活性との間には正比例関係(相関係数0.97)があり、細胞内容物の緩やかな漏洩が上記ばらつきの原因であることがわかった。つまり、PEG-GRGDSを用いた非接着単一細胞培養系により詳細な細胞挙動と正確な細胞活性の評価が可能になることが示された。一方、観察が容易な強化緑色蛍光タンパク質(EGFP)の両端にGRGDSとシステイン(C)をそれぞれ配置したGRGDS-EGFP-Cを作製した。金蒸着させたガラス基板を用いた検討により、初代ラット肝細胞とGRGDS-EGFP-Cとの結合性およびGRGDS-EGFP-Cと基板との結合性が確認された。これにより、GRGDS-PEG-Cを用いた単一細胞培養肝細胞の固定化による細胞チップ開発への可能性が示された。
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