2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21656223
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
大前 伸夫 神戸大学, 大学院・工学研究科, 名誉教授 (60029345)
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Keywords | 原子状酸素 / 原子状窒素 / カーボン / 低地球軌道 / カルボキシル基 / アミノ基 / アミノ酸 |
Research Abstract |
本研究では、高真空中において各種固体炭素に原子状酸素および原子状窒素を照射してアミノ酸が生成される機構を研究し、地球の低軌道で生命が非生物的に生成される可能性を検討するものである。生命体の起源はC,H,O,NからなるCHON粒子から発生したという学説があるが、本研究では高真空中に残存する水素をHとして取り扱っている。ターゲットとして用いたCは高配向グラファイトのプレート、カーボンナノチューブの薄膜、フラーレンC_<60>の薄膜、およびカーボンオニオンの薄膜である。ビーム照射後の表面をX線光電子分光(XPS)で化学組成を、フーリエ変換赤外分光(FT-IR)で化学結合状態を、高速クロマトグラフィー(HPLC)でアミノ酸の同定、スキャッタリングのその場解析で反応生成物の検出を行って、アミノ酸の生成を総合的に判定した。その結果、すべての炭素材料において、原子状酸素照射によるカルボキシル基の生成、原子状窒素によるアミノ基の生成がXPSによって特定できた。それぞれの炭素材料によって、一つあるいは複数の分析結果がアミノ酸の生成を裏付けた。また、HOPGに原子状の酸素と窒素を照射した試料の高分解能透過電子顕微鏡からは、グリシンの生成に由来すると思われる非常に格子間隔の大きい生成物が発見されている。HOPGを除くナノカーボンはそのサイズ効果のため大気圏突入時の摩擦熱の影響が小さく、宇宙塵の一種として地球上に降り注ぐといわれており、低地球軌道において生成したアミノ酸が地球に到達する可能性を示すことができた。研究結果の一部を学術誌サイエンスに投稿したが掲載が叶わなかったので、さらに推敲して別の学術誌に投稿する予定である。
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Research Products
(2 results)