2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21656238
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
古澤 孝弘 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (20251374)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 洋揮 大阪大学, 産業科学研究所, 特任助教(常勤) (00516958)
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Keywords | 放射線、X線、粒子線 / 原子・分子物理 / 原子力エネルギー / 計算物理 |
Research Abstract |
平成22年度は、高分子薄膜に前年度実験で使用した電子捕捉剤を高濃度(10~50wt%)添加した状態での電子捕捉剤の反応量を、開発したシミュレーションコードにより解析した。これまでの研究から、電離放射線により生成した熱化電子と電子捕捉剤の反応はこの濃度範囲で1PS以内に完了することを見積もっている。本研究を成功させるためには、熱化電子と電子捕捉剤との反応量の正確な評価が重要あるが、そのためにポリヒドロキシスチレンをマトリクス高分子として選択した。ポリヒドロキシスチレンは固体薄膜状態で水酸基が水素結合ネットワークを組んでおり、イオン化されると水酸基の酸素と水素間の電子密度が減少し、水素が水素結合により隣接する酸素から引っ張られているため速やかに脱プロトン反応を起こす。さらに、高分子中に水素結合ネットワークが形成されているため、高分子マトリクス中をプロトンが容易に移動可能であり、高分子中に酸感応色素を分散させておくことにより、発生したプロトン量を正確に測定することが可能である。ここで、電子捕捉剤が存在しない系では電子はプロトンもしくはその前駆体であるラジカルカチオンと再結合し、プロトンを失活させるため、プロトンの生成量が電子捕捉剤の反応量と1対1対応となる。以上の原理を利用し、電子捕捉剤の反応量を見積もり、電子捕捉剤の反応量から熱化電子の固体マトリクス中での反応半径を見積もった。典型的な電子補足剤であるtriphenylsulfonium triflateで反応半径は0.7nmであった。
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