2010 Fiscal Year Annual Research Report
力学的応答測定を利用した極微小タンパク質結晶の判別・評価法の開発
Project/Area Number |
21657026
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
田中 勲 北海道大学, 大学院・先端生命科学研究院, 教授 (70093052)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
芳賀 永 北海道大学, 大学院・先端生命科学研究院, 准教授 (00292045)
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Keywords | X線結晶解析 / タンパク質結晶化 / 走査型プローブ顕微鏡 |
Research Abstract |
本研究課題では,タンパク質結晶化初期スクリーニングにおいて析出する極微小結晶様物質の力学的応答特性を,走査型プローブ顕微鏡を用いて測定するための研究開発を行った. 前年度までに,走査型プローブ顕微鏡でタンパク質結晶を観察する系を構築し,さらに塩の結晶についても同様の実験系を考案した.本年度は,タンパク質結晶および塩結晶の測定数を増やすことに取り組んだ.タンパク質結晶については,ニワトリ卵白リゾチームと甘味タンパク質ソーマチンについては成功したが,確立した実験系ではかなり高濃度のタンパク質溶液が多量に必要となり,かつ通常の結晶化とは方式が異なるため,既存の結晶化戦略との溝を埋めるような研究が必要とされる.また本課題内で,結晶面の違いによって,力学的性質の差異が示唆されたため,異なる結晶面の特性を比較検討する研究が必要であることが見出された.塩類の結晶について本年度は,前年に成功したNaClと同様の方法によってさまざまな塩類を結晶化させることを試みたが,NaCl以外では測定に適した結晶を得ることはできず,タンパク質と塩類を詳細に比較するためには,異なる方法で結晶を得る必要がある. タンパク質とNaClの結晶の力学的応答を比較した場合,前者のほうが弾性に富むこと,またNaClの結晶は,表面に強い電荷を帯びていることが示唆され,結晶の判別に応用できることが期待された.しかし,タンパク質と塩類の両者を同じ条件下で計測することは,本課題内では技術的に難しく,いずれも将来的な発展研究が待たれる. 以上の結果から,(1)リゾチームとソーマチンの結晶表面を同一の実験系で観察したこと,(2)タンパク質結晶表面の力学的応答を測定したこと,(3)類似の実験系でNaClの結晶表面を観察し,タンパク質結晶と比較したことという新規の3点について現在投稿論文の準備中である.
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