2009 Fiscal Year Annual Research Report
変態を経て変化する棘皮動物ヒトデの自然免疫系の分子的実体を探る
Project/Area Number |
21657063
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
古川 亮平 Keio University, 文学部, 助教 (90458951)
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Keywords | 自然免疫 / 個体発生 / 変態 / 認識メカニズム |
Research Abstract |
申請者のこれまでの研究から、ヒトデ幼生の間充織細胞は、同種細胞を特異的に認識し、認識できないものを全て異物と見なす認識メカニズムによって生体防御を行っていることが分かってきている。一方、ヒトデ成体では、同種異系組織の移植片に対して、拒絶反応が生じることが知られている。そこで本研究では、棘皮動物イトマキヒトデを材料に、幼生及び成体における免疫関連タンパク質レパートリーを比較解析し、認識メカニズムの変化を分子レベルで解析するための研究基盤の確立を目的とした。まず、イトマキヒトデ成体では同種異系移植拒絶の報告がないため、移植拒絶反応を分子レベルで解析するために移植系の確立を目指した。別種のヒトデで報告された表皮移植系では移植拒絶に数ヶ月を要していることから、短期間で拒絶反応を生じさせるために同種異個体の体腔細胞の移植を試みた。人工海水で30μg/mlに希釈したCFSEを個体Aの体腔に1ml注射し、8時間のインキュベーションにより体腔細胞を蛍光ラベルした。その後、個体Aの体腔液1mlからラベルした体腔細胞を回収、洗浄した後、1mlの人工海水で再懸濁して、個体Bの体腔に注射した。対照実験として、個体Cから体腔液1mlを抜き、再度個体Cに注射した(自家移植)。12時間後、個体B及び個体Cの体腔細胞を蛍光顕微鏡下で観察した所、個体Bの体腔液中には凝集塊を形成した体腔細胞が多数観察され、その凝集塊中にのみ蛍光シグナルが観察された。この事実は、個体Bの体腔細胞が、個体Aの体腔細胞に対して免疫応答していることを示している。また、個体Cでは、体腔細胞による凝集塊形成は認められなかった。以上より、短時間で解析可能な移植系を確立することができた。一方、免疫関連分子に関しては、現在、MS解析の結果から候補に上がった約150の遺伝子を解析中である。
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