2010 Fiscal Year Annual Research Report
微量元素分析による長距離移動性昆虫発生源推定の試み
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21658021
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
沢辺 京子 国立感染症研究所, 昆虫医科学部, 室長 (10215923)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 年則 国立感染症研究所, 昆虫医科学部, 主任研究官 (10300930)
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Keywords | 微量元素 / 中性子放射化分析 / 疾病媒介蚊 / 移動性昆虫 / 安定同位体比 |
Research Abstract |
これまでに土壌およびコガタアカイエカの合計59検体を照射試料として機器中性子放射化分析および安定同位体比の解析を行った。試料の採取地の違いによって含有量が変動しやすい元素と変動しにくい元素を、代表的な元素種24種から抽出することできたが、蚊の飛来源を推定するという本来の目的のためには、土壌とその水域に生息する蚊幼虫の両方に共通して存在する微量元素を特定することが必要である。さらに検体数を増やし相関関係の精査、共通の元素種の絞り込みを予定していたが、昨年、本年と原子炉運転停止のトラブルの発生により、同一地点の土壌と蚊からの測定結果が得られた地点は現在のところ9に留まっている。従って、この9地点における測定値を詳細に解析するとともに、新たに高輝度光科学研究センターにおいてSpring-8による詳細な元素マッピングを今年度は計画した。 一方、コガタアカイエカのミトコンドリア遺伝子における塩基配列の解析から、CO1領域の変異で国内に生息する集団(日本型)と日本以外のアジア諸国に分布する集団(アジア型)とが判別可能であることが判明した。その結果を基に九州各地に設置された飛来昆虫用定点トラップに捕集されたコガタアカイエカの中に、アジア型と同定された個体を見出した。コガタアカイエカが海外から日本に飛来侵入する可能性が強く示唆された。さらに、長距離飛翔に関与する脂肪およびグリコーゲン量の変動を経時的に調べた結果、本種蚊の両物質の量的変動は典型的な長距離移動性昆虫の特徴であることが明らかになった。雌成虫をフライトミル法により飛翔させたところ、最長25時間(推定約26km)の自力飛翔が認められたことからも,コガタアカイエカが長距離飛翔が可能であることが検証できた。本年度はこれらの結果と含有微量元素解析から得られる結果とを照合し、本種蚊の長距離移動と飛来源の推定に関して総括する。
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Research Products
(7 results)