2009 Fiscal Year Annual Research Report
イソチオシアネートによる植物体内レドックス調節機構の解明
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21658025
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
原 正和 Shizuoka University, 農学部, 教授 (10293614)
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Keywords | イソチオシアネート / 植物 / レドックス |
Research Abstract |
イソチオシアネート(別名カラシ油、以下ITC)は、主にアブラナ科植物が傷害時に発生する反応性に富む二次代謝産物である。何故植物がITC発生するのかは、19世紀末のITC発見以来、常に議論されてきた。ITCは抗菌及び動物忌避活性をもつため、植物自身の防御物質と考えられてきた。しかし、一部の植物種をのぞき、ITCの発生量は、抗菌・忌避作用の敷居値に達せず、この説明を疑問視する研究者は多い。申請者は、3年前からITCの植物作用に関する初歩的な研究を進め、「ITCは、植物細胞内のレドックスバランスを変化させ、ストレス抵抗性を高める情報伝達因子である」という作業仮説を立てた。本研究の目的は、本仮説を、生化学的、遺伝子工学的な手法によって証明することである。シロイヌナズナに、メチルITC、アリルITC、フェネチルITCを様々な濃度で作用させると、高濃度(10mM以上)でオキシダティブバースト様の反応が起きた。特に活性が強かったフェネチルITCについて、GST遺伝子の反応を調べた。シロイヌナズナに存在する47種類のGST遺伝子のうち、遺伝子データベースのEST情報から発現量の多い16種類を選び、フェネチルITC(1mM)によるこれらGST遺伝子の発現変化を、半定量RT-PCRでチェックした。すると、AtGSTF6(At1g02930)、AtGSTF7(At1g02920)、AtGSTZ1(At2g02390)、AtGSTU19(At1g78380)の発現がフェネチルITCによって誘導された。これら4種のうち、3種は植物固有のGSTであった。特に、除草剤セーフナーや脂肪族アルデヒドに応答することで知られるAtGSTU19(At1g78380)の発現は顕著であり、フェネチルITCのみならず、メチルITC、アリルITCに対しても応答を示した。これまでの結果をまとめると、高濃度ITCは、植物細胞内レドックスバランスを崩してオキシダティブバーストを誘発し、低濃度のITCは、特別なGST遺伝子の発現を高めることが分かった。特に、AtGSTU19(At1g78380)は、植物におけるITC解毒・応答機構の中心的な遺伝子の1つである可能性が示唆された。
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Research Products
(3 results)