2009 Fiscal Year Annual Research Report
ATPからポリリン酸へ、生命エネルギー進化の逆をたどる分子改変
Project/Area Number |
21658031
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
黒田 章夫 Hiroshima University, 大学院・先端物質科学研究科, 教授 (50205241)
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Keywords | ATP / ポリリン酸 / 進化 / グルコキナーゼ / 生命エネルギー |
Research Abstract |
ATPは生命エネルギーの通貨と言われ、多くの酵素がATPをエネルギー源あるいはリン酸化の基質として利用している。一方ポリリン酸(polyP)は数十から数百のリン酸が結合したポリマーであり、原始生命が生まれたとされる火山の熱水中に含まれる。このことから原始生命は複雑なATPよりもむしろポリリン酸をエネルギーとして利用したのではないかと考えられている。我々はポリリン酸を利用してグルコースをリン酸化する酵素(polyP-GK)を発見し、その立体構造を解明した。ATPを利用してグルコースをリン酸化する酵素(ATP-GK)と構造を比較した結果、両起源が同じであることが推定できた。本研究ではATPを利用する酵素を改変し、ポリリン酸を利用できる様にすることに挑戦した。まず、大腸菌ATP-GKの溶液に、ATPに対し3倍濃度のトリポリリン酸を添加した実験では、polyP-GKとATP-GKのリン酸結合部位の共通性にも関わらず、ATP反応の阻害が起きなかった。このことから、ATP-GKには、polyPがリン酸結合部位で結合しないことが示唆された。それは、触媒部位内のリン酸結合部位におけるリン酸の結合が強くなく、その結合よりも、リン酸を触媒部位へと誘導するメカニズムが重大な役割を果たしている可能性を示している。負電荷を帯びているpolyPを触媒部位へと誘導するには、触媒部位の入り口とその周辺に塩基性のアミノ酸残基が大きく関わっている可能性がある。実際、polyP/ATP-GMKとpolyP-GKの触媒部位の入り口の回りには、多数の塩基性のアミノ酸が存在する。しかし、ATP-GKの場合は、触媒部位の入り口の上部にいくつかの塩基性のアミノ酸が存在するだけで、比較的少ない。以上の結果より、触媒部位の入り口とその周辺のアミノ酸として、Asp302、Gly262、Asn14の置換が考えられた。
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Research Products
(3 results)