2009 Fiscal Year Annual Research Report
FT-ICRMS分析を用いた森林皆伐地の溶存有機物動態に関する研究
Project/Area Number |
21658055
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
大橋 瑞江 University of Hyogo, 環境人間学部, 准教授 (30453153)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉山 裕子 兵庫県立大学, 環境人間学部, 助教 (40305694)
高橋 勝利 独立行政法人産業技術総合研究所, 計測フロンティア研究部門, 研究員 (00271792)
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Keywords | 物質循環 / 水資源涵養 / 水質 / 森林管理 / 溶存有機物 |
Research Abstract |
淡水は、人間の生活に不可欠な資源であり、その大部分は森林地帯に蓄えられている。従って地上部を覆う森林の密度や樹種、伐採などの管理状態は、地下部に蓄えられる水の溶存成分に大きく影響し、渓流河川の水質をも支配している。溶存有機物は、主要な炭素のリザーバーであり、水質を決定付ける重要な因子である。しかし、その存在形態や存在量を把握することは難しく、従来は有機物全体の蛍光スペクトルや元素組成比などの特徴を調べる、いわゆるバルクキャラクタリゼーションによるものであった。本研究は、森林地域における降雨・林内雨・土壌水・地下水・河川水中溶存有機物の組成を超高分解能質量分析器を用いて分子レベルで特徴づけ、さらに植栽地と伐採地との比較を行うことで、河川水質に土地利用形態が及ぼす影響を明らかにすることを目的としている。21年度はフィンランド北東部・カレリア地方の森林流域試験地においてサンプル採取のためのライシメーター等の設置を行い、初夏(6~7月)および秋(9~10月)にサンプリングを行った。DOCおよび蛍光分析の結果、雨水と林内雨はDOC濃度に違いはほとんどないが、林内雨でタンパク様物質蛍光ピークの位置に林内雨に雨水の約3~5倍、腐植様物質蛍光ピークの位置においては約10~14倍高い炭素濃度あたりの蛍光強度が観測され、蛍光性有機物質の付加が示唆された。土壌水では、たとえば秋季のサンプルでは地下15cm(A層下)でのDOCは植栽地で11.55~24.21mgC/L、皆伐地で6.49~7.25mgC/L、地下35cm(B層下)においては植栽地で21.49~29.18mgC/L、皆伐地で2.00~3.82mgC/Lと違いが見られ、皆伐地の土壌水のDOCは、A層下とB層下両方において植栽地のものよりもかなり低いことが分かった。蛍光測定の結果からは、皆伐地では強い腐植様物質のピークが観測されたのに対し、植栽地においては強いタンパク様物質の蛍光ピークが観測され、地上部の管理が異なると、地下部の土壌水の有機物組成が変化することが明らかになった。
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