2011 Fiscal Year Annual Research Report
虫こぶ形成昆虫における生物多様性-生態系機能関係の解明
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21658056
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
尾崎 研一 独立行政法人森林総合研究所, 北海道支所, グループ長 (50343794)
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Keywords | 昆虫 / 林学 / 生態学 / 植物 / 虫こぶ / 生態系サービス / 生態系機能 |
Research Abstract |
森林を対象にして、生物多様性が低下すると生態系機能も低下するという関係(多様性一生態系機能関係と呼ぶ)を調べた研究はほとんど行われていない。これまでに多様性一生態系機能関係が明らかにされない原因として、個体数やバイオマスが少ない低密度種の存在がある。低密度種は群集の構成種の多くを占めるが、個々の種が生態系に及ぼす影響が小さいため、その存在は多様性一生態系機能関係を明らかにするのを妨げてきた。本研究は、低密度種として虫こぶ形成昆虫を対象とすることで、その多様性一生態系機能関係を明らかにすることを目的とする。カサアブラムシ科の虫こぶの多様性が落葉落枝の分解過程に及ぼす影響を明らかにするため、エゾマツカサアブラムシ及びヒメカサアブラムシの虫こぶと、通常の落葉を入れてエゾマツ林の林床に設置したリターケースを回収し、サンプルの分解速度を測定した。その結果、落葉の分解速度は虫こぶよりも約10%速く、虫こぶ形成により分解が遅延することが明らかになった。窒素含有量は分解の前後ともに虫こぶの方が高かったので、分解速度の遅延は窒素不足のためではなく、フェノールやリグニン等の難分解性物質のためだと考えられた。分解速度は虫こぶの種間では変わらなかった。また、複数種の虫こぶを入れて多様性を増加させた場合にも分解速度に変化は生じなかった。虫こぶの大きさやマダラメイガの幼虫による食害の有無も分解速度に影響はなかった。本研究での3年間の実験により、虫こぶ形成昆虫は低密度であっても森林の物質生産や分解過程に様々な生態系機能をもたらすことが示された。
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Research Products
(5 results)