2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21658058
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
岡部 貴美子 独立行政法人森林総合研究所, 森林昆虫研究領域, チーム長 (20353625)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
升屋 勇人 独立行政法人森林総合研究所, 森林微生物研究領域, 主任研究員 (70391183)
神崎 菜摘 独立行政法人森林総合研究所, 森林微生物研究領域, 主任研究員 (70435585)
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Keywords | ダニ / 菌 / 線虫 / 樹液 / 便乗 / 昆虫 |
Research Abstract |
キーストーン種は生態系の指標としても保全の対象としても最も有効といわれるが、微生物の多様性に関する知見はきわめて少なく、生物多様性の成立メカニズムすらわかっていない。そこで本研究では、生物多様性の高いハビタットの出現要因と生物多様性を高めるキーストーン種の探索を行い、微生物多様性保全の実施に資することとした。樹液の進出初期から継続的に数年にわたって樹液が進出する樹木で微生物を調査した。樹液浸出初期には、樹液ハビタットに共通のダニ、線虫、菌類は認められなかったことから、樹液の長期的な安定性が、多様性の創出に最も影響すると考えられた。また浸出直後を除くほとんどすべての樹液からバクテリア食のヒゲダニが採取されたことから、ダニの多様性からはバクテリアがキーストーンである可能性が示唆された。一方、樹液酵母の多様性はエコシステムエンジニアの存在なしには成立しないことから、キーストーンであるエコシステムエンジニアの存在から、微生物多様性創出への過程が想定できた。安定的な樹液に出現する種のほとんどは昆虫便乗性であること、これらの昆虫は樹液の揮発性物質に誘引されている可能性が高いことから、樹液の多様性のキーストーンはエコシステムエンジニアである昆虫である可能性が示唆された。このような昆虫の候補として、ボクトウガやヒメボクトウガなどの幼虫が示唆された。 本研究により微小生物はハビタットごとに強い相互関係が示唆されたことから、特定のハビタットに着目した微生物の採集は微生物の多様性研究に有効であることがわかった。また菌類の多様性がその他の微小生物の多様性に関与する可能性が示唆された。これらの成果は多様性保全の際に、エコシステムエンジニアの保全という新たな視点での生態系保全の在り方を示唆するものである。
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Research Products
(2 results)