2009 Fiscal Year Annual Research Report
ストレス環境が誘導する植物万能細胞の巨大中空繊維分泌
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21658063
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
近藤 哲男 Kyushu University, バイオアーキテクチャーセンター, 教授 (30202071)
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Keywords | カルス / プロトプラスト / ストレス応答 / 繊維生産誘導 / 懸濁培養細胞 |
Research Abstract |
平成21年度には、i)シラカバの葉柄から得られる全能性細胞塊カルスから植物万能細胞(カルスプロトプラスト)を新たに調製して、生物機能性素材とする、さらに、ii)その細胞に、過剰のカルシウムイオン添加によるストレスを負荷することにより、同調率を上げた繊維生産誘導系条件を確立することを計画した。 通常の寒天培地の2倍のNAAを添加したMS寒天培地において、カルス誘導が促進され、懸濁培養細胞に適した軟白なカルスが得られた。このカルスを用いることにより、懸濁培養細胞の調製が容易になった。さらに、カルスの誘導期間について、通常の寒天培地では3ヵ月を要するところ、本系では、1ヶ月に短縮することができた。前者は、NAAの細胞壁柔化作用、後者は細胞分裂促進効果によるものと考えられる。また、懸濁培養の際に、直径6cm細胞培養シャーレ、三角フラスコおよびバッフル付き三角フラスコで懸濁培養の培養容器を検討したところ、バッフル付三角フラスコが最も高い増殖性を示した。これは、バッフルが存在することで液体培地の液面が激しくかくはんされ、培地中の酸素含有率が高くなるためと考えられる。 懸濁培養細胞からプロトプラストを調製するための酵素は、0.1%セルラーゼ'ONOZUKA'R-10と0.05%ペクトリアーゼY-23の組み合わせが最も適していた。懸濁培養細胞の培養日数に伴うプロトプラスト収率の変化を調べたところ、培養日数の増加に伴い、プロトプラストの収率も増加した。1/2MS培地に200mM CaCl_2を添加し、pH3.5に調整した培地を用いたとき、培養7日目に肥大したプロトプラストが観察された。さらに培養を続けると、培養10日目に繊維を生産するプロトプラストが観察された。これは、葉由来の系においても見られることで、96穴プレート一枚あたりに数個のプロトプラストが行っていた。さらに約60日目には96穴プレート一枚あたり、平均約45個のプロトプラストが繊維生産を行っていた。葉由来のプロトプラストが96穴プレート一枚あたり平均約25個だったのに対し、その割合は約2倍となった。繊維生産誘導までの期間が、葉由来の系とほぼ同じの約1ヶ月半から二ヶ月であったことから、その期間に繊維生産プロセスの誘導が行われていると考えられる。
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Research Products
(2 results)