2011 Fiscal Year Annual Research Report
力学的環境下における樹木細胞壁形成の分子機構の解析
Project/Area Number |
21658065
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Research Institution | Chiba Institute of Technology |
Principal Investigator |
渡邊 宇外 千葉工業大学, 工学部, 准教授 (70337707)
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Keywords | 森林工学 / 遺伝子 / 細胞・組織 |
Research Abstract |
平成23年度は、その前年度に引き続き、力学負荷を受ける植物培養細胞における細胞壁二次代謝関連遺伝子の発現について定量解析を行った。特に、培養細胞に対する応力負荷時間に加え、負荷応力の大きさが二次代謝関連遺伝子の発現に与える影響について詳しく調べた。また、解析の対象とする遺伝子については、その機能などについて見直しを行い、細胞壁二次代謝の転写因子をコードする遺伝子において新たな解析対象遺伝子を追加した。細胞壁二次代謝の初発反応を触媒するPALの遺伝子については、負荷応力が比較的小さい場合には遺伝子発現量の増加が認められたが、負荷応力が大きくなると、その増加は認められなかった。負荷応力が比較的小さい場合、PAL遺伝子の発現量は、応力負荷時間60分のときに大きくなり、応力負荷時間とともに減少した。同じく二次代謝生合成に重要なCCRの遺伝子については、負荷応力が増加すると、その遺伝子発現量はやや増加した。一方、応力負荷時間の増加によるCCR遺伝子の発現量の変化は明確ではなかった。細胞壁二次代謝の転写因子については、MYB46遺伝子の発現量は、比較的小さい応力負荷の場合では明確な変化は認められなかったが、負荷応力が大きくなると、その発現量は応力負荷時間とともに増加した。その他の転写因子の遺伝子については、その発現量自体が小さく、負荷応力や応力負荷時間による遺伝子発現量の明確な変化は認められなかった。これらの結果から、力学的環境の変化が植物細胞の細胞壁二次代謝の初発反応に影響を与え、力学的作用が二次代謝反応の重要なシグナルであることが示された。一方で、力学的環境下にある植物細胞では、従来から説明されている細胞壁二次代謝の転写因子ではなく、別の転写因子が関わる遺伝子発現制御機構があると推測された。
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