2011 Fiscal Year Annual Research Report
渦鞭毛藻の無毒変異メカニズム解明のための一細胞ライブラリーの構築
Project/Area Number |
21658075
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
長 由扶子 東北大学, 大学院・農学研究科, 助教 (60323086)
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Keywords | 水産学 / プランクトン / 麻痺性貝毒 / 無毒変異 / cDNAライブラリー |
Research Abstract |
本研究では麻痺性貝毒生産渦鞭毛藻Alexandrium tamarenseの無毒変異メカニズムを解明するために、渦鞭毛藻の特殊性に由来する困難を克服する実験系を確立することを目的とした。すなわち毒量及び遺伝子プロファイルの均一なサブクローン系を作出し、最も小さな単位である一細胞毎に解析するための手法の確立と試料調製をめざした。本年度当初にはまず均一サブクローン系の培養法確立と細胞周期制御して得られた細胞でのcDNAライブラリー構築を企図したが、研究の遂行にあたり新たにデータベース検索したところ、代謝阻害剤5-フロロ-2'-デオキシウリジン(FUdR)にチミジレートシンターゼ以外の酵素阻害活性があることがわかり、本阻害剤での毒生産停止について追求することにした。FUdRはS期に周期を停止させることがわかっていたが、毒生産阻害機構については不明である。最近らん藻のサキシトキシン生合成遺伝子クラスターに含まれるsxt遺伝子群のひとつがFUdRの阻害する酵素の遺伝子と相同性を示すという報告がされた。そこでFUdRが直接麻痺性貝毒生合成を阻害している可能性が示唆された。FUdRで周期と毒生産を停止させた渦鞭毛藻でチミジン添加で周期がまわるのか、毒生産に変化があるかどうか調べたところ、FUdR単独添加系よりも増殖はより抑制された上、毒生産もより抑制されることがわかった。チミジンにも同酵素阻害活性が知られており、相加的に作用したものと推定された。CytBの5'-隣接部位のPCR産物で無毒株にのみ見られた配列で設計した蛍光標識オリゴDNAでのIn situ hybridizationではコントロールより強い蛍光が検出されたものの有毒株の細胞でもシグナルがみられ、特異性はなかった。3群一斉毒量分析法のためのグラジエント条件をさらに高感度用に改良し、有毒細胞抽出液を希釈後10細胞相当量を注入してC2,GTX4及びneoSTXと溶出時間の一致するピークを検出することに成功した。無毒化のメカニズム解明につながる重要な結果が得られた。
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