2009 Fiscal Year Annual Research Report
農地土壌を排出権取引に組み込むための国際的枠組みの構築
Project/Area Number |
21658077
|
Research Institution | Gakushuin Women's College |
Principal Investigator |
荘林 幹太郎 学習院女子大学, 国際文化交流学部, 教授 (10460122)
|
Keywords | 政策研究 / 自発的オフセット市場 / 排出権市場 / 環境保全型農業 / アグレゲーター |
Research Abstract |
平成21年度においては、排出権取引における農業部門の位置付けに関して先進国調査を行った。具体的には、米国における動向について、現地調査を行うとともに、豪州について文献による調査を行った。これにより以下を明らかにした。(1)米国連邦政府における排出権市場については(調査時点で、下院法案が議会を通過し、上院法案が議会に提出されたところ)農業部門をオフセットに含めることが排出権市場の前提である政治的コンセンサスが概ね確立されたこと、(2)オフセット対象にする農業プロジェクトについては、農地土壌による炭素固定に止まらず広範であること、(3)オフセットの方法論についても政治的な事項となっており、とくにベースラインの設定に関連した「早期実施者」の取り扱い(市場開設前に温室効果ガスを削減・吸収していた農家を市場に含めるか否か)が政治的に重要な事項となっていること、(4)このような政治的な動きに牽引される形で、政府機関(農務省)による方法論検討が開始されたこと、(5)アグレゲーターの設置が必要とされていること、(6)豪州においても、農業部門の取り扱いが排出権市場を巡る政治的な事項となっており、規制対象とすべきか、オフセットプロジェクト対象にすべきかについて未決定であること、等を明らかにした。加えて、京都議定書CDMの枠内における農業の取り扱いを分析した。具体的には、世界銀行生物炭素基金の支援を行って実施されているケニアの農地土壌炭素吸収プロジェクトについて現地調査を行い、プロジェクト担当者および参加農家、さらには世界銀行へのインタビューを実施した。その結果、以下を明らかにした。(1)農業部門についてはCDMの枠内での取り扱いについて未定のため、世界銀行はVCS(Voluntary Carbon Standard)において認証取得することとした。これに象徴されるように、自発的オフセット市場における認証が公的市場の方法論上の硬直性から、それに代替する機能を果たしつつあること、(2)VCSの方法論上の論点は、農地土壌吸収に係る不確実性を吸収するためのパーマネントプールの率であること、(3)ケニアプロジェクトでは60%の高率が課せられており、農家へのオフセット販売収入が限定的となっていること、(4)追加性(ベースライン)については、厳密性は必ずしも要求されていないこと。
|