Research Abstract |
私たちはこれまでにヒトゲノム情報から推定上の新規な小胞体膜に存在するユビキチンリガーゼの特定を行なってきた.その生理あるいは病態生理的特徴を解明するために,基質の同定を試みた,まず,動物細胞内に当該ユビキチンリガーゼを強制発現させ,特異的抗体により免疫沈降反応を行った.免疫沈降物をSDS-PAGEで展開し,ゲルを染色した後,得られたバンドを切り出して酵素処理した.これらをMALDI TOF/MASS解析し,蛋白質を特定した.数種の候補蛋白質が単離されたが,その一つはインスリン分解酵素(IDE)であった.IDEは末梢ばかりでなく中枢神経系にも高発現している,さらには脳内ではアルツハイマー病発症に関わるAβの分解に寄与していることが明らかとなっている.そこでこのユビキチンリガーゼとIDEの関係の詳細を調べた.両者を神経細胞で強制発現させた際に結合が観察されたが,ユビキチンリガーゼ単独で発現した際にも内在性のIDEと強く結合することから,両者の結合は非常に強いものであることがわかった.さらには,このときIDEはポリユビキチン化されることを見いだした.また,このユビキチン鎖はLys48結合であることを特異的抗体から明らかにした,さらに,内在性IDEはHRD1を過剰発現させることで急速に分解されることを明らかにした,逆に,HRD 1をノックダウンさせるとIDEの半減期は有意に延長されることがわかった.今後は,さらに本研究を発展させ,ヒト病態におけるタンパク質量の変化を明らかにし,神経変性疾患発症との関わりについて明らかにする予定である.
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