2009 Fiscal Year Annual Research Report
ドナー特異的輸血による移植肝由来細胞のホスト内動態と免疫寛容機構の組織学的解析
Project/Area Number |
21659048
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Research Institution | Dokkyo Medical University |
Principal Investigator |
上田 祐司 Dokkyo Medical University, 医学部, 助教 (10364556)
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Keywords | ラット / 肝臓 / 移植 / 免疫寛容 / 樹状細胞 / 細胞遊走 / CD8陽性T細胞 / アロ抗体 |
Research Abstract |
ヒト臓器移植においてドナー特異的免疫抑制方法の開発が望まれて久しい。我々はラット同種(アロ)肝移植拒絶モデルを確立し(Hepatplogy 47 (4) : 1352, 2008)、この系にドナー特異的輸血(DST)を前処置として施すと移植片が生着することを見いだした。そこで本研究を深めてDSTの本態を明らかにすることを着想するに至った。 2年計画の初年度としてまず、DST+肝移植(寛容群)とDST(-)+肝移植(拒絶群)におけるレシピエントリンパ組織における免疫担当細胞の動態を経時的に比較した。その結果、拒絶群のリンパ組織で起こる、移植肝由来ドナー樹状細胞の遊走とレシピエントCD8陽性T細胞増殖性応答が寛容群では全く認められなかった。そこでDSTのみで何が起こるのかを調べた結果、レシピエント血中にドナー特異的IgM抗体が産生され、このアロ抗体は補体依存性にドナー細胞特異的な細胞障害活性を有していることを見いだした。他の細胞遊走関連分子の発現変動を解析すべく、移植早期(6h)における肝臓、脾臓でcDNAマイクロアレイを行ったが、両群で顕著な差は認められなかった。従って寛容群では移植後にドナー細胞がレシピエントリンパ組織に遊走できないために、エフェクターCD8陽性T細胞産生が誘導されないと考えられた。実際、DST前処置後7日目のラット血清をナイーブラットに養子免疫し、肝移植を行う(養子免疫群)と平均生存日数を有意に延長させることに成功した。しかしながら、養子免疫群の免疫寛容は不十分であったことから、DSTによる免疫寛容成立には他の免疫調節因子が関与する可能性が示唆された。そこでFoxP3分子を指標に、調節性T細胞(Treg)の動態を解析したところ、寛容群のレシピエント脾臓ではFoxP3陽性細胞が移植後7日後頃より増加していた。 以上、本年度の成果としてDST前処置がレシピエントにもたらす免疫寛容の2大要素としてアロ抗体産生とTreg産生を明らかにしだ。特に拒絶反応を誘導する主細胞(ドナー肝樹状細胞)の遊走を阻害するというコンセプトは特異的免疫抑制法を模索していく上で非常に独創的である。現在、さらなる解析と臨床応用を目指した本法の検討を行っている。
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