2009 Fiscal Year Annual Research Report
甲状腺濾胞細胞の新奇培養法を用いたサイログロブリンによる甲状腺機能制御機構の解明
Project/Area Number |
21659052
|
Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
下仲 基之 Tokyo University of Science, 理学部, 准教授 (30277272)
|
Keywords | 甲状腺 / 上皮細胞 / サイログロブリン / 極性培養 |
Research Abstract |
甲状腺ホルモン合成の基質分子サイログロブリン(Tg)は分子量約600,000の巨大な糖タンパク質であるが,最近甲状腺濾胞機能の自己調節能や甲状腺細胞の増殖制御作用をもつことが明らかになってきた。しかしこれらに関する研究は主に単層培養細胞を用いた系で行われており,極性をもつ甲状腺細胞の生理機能を正確に反映しているとは言い難い。そこで本研究では,Tg分子がどのようなメカニズムで甲状腺組織の機能制御を行っているかを明らかにするひとつの方法として,グラジエントカルチャーシステムを用いて,生理機能を保持した状態の甲状腺上皮細胞を培養することのできる新たな培養法の確立を目指した。まず,甲状腺濾胞を模した状態を作るための極性培養に用いる支持体の表面をコートする物質の検討を,ラット甲状腺上皮細胞FRTL-5を用いて行った。その結果,細胞接着はMatrigelを用いた時が最も強く,細胞間の密着性を十分に保つことがわかった。続いて支持体として各種フィルターを検討したところ,孔サイズ0.45μmのNitrocelluloseの二重膜が,二相間の培養液の漏出がなく培養に適している事がわかった。つぎに,これらの条件下で,頂端側培地としてTg含有培地,基底側培地としてTg不含培地を用い,培養液を灌流させながらFRTL-5細胞の培養を濾胞内腔を模した状態で行った。その結果,灌流培養48時間後には頂端側の培養液に含まれるTgの量が増加していた。また,培養液中に分泌される各種プロテアーゼについて検討したところ,Cathepsin Kの活性が特に頂端側で増加することがわかった。これらの結果から,本条件下でFRTL-5細胞を培養すると,生理的機能をもった細胞として維持できることがわかった。現在,アガロース小滴ゲルを用いて,同様に生理機能を保持した甲状腺細胞の培養が可能となるよう,アガロース濃度や小滴のサイズなど,各種条件を検討中である。
|