2011 Fiscal Year Annual Research Report
甲状腺濾胞細胞の新奇培養法を用いたサイログロブリンによる甲状腺機能制御機構の解明
Project/Area Number |
21659052
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
下仲 基之 東京理科大学, 理学部, 准教授 (30277272)
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Keywords | 甲状腺 / 上皮細胞 / サイログロブリン / 極性培養 / 甲状腺ホルモン |
Research Abstract |
甲状腺ホルモンは甲状腺上皮細胞により構成される甲状腺濾胞で合成される。このホルモンの生合成過程は甲状腺刺激ホルモン(TSH)を含む様々な因子により制御されているが,甲状腺の濾胞構造に依存した制御機構についての研究は行われていない。本研究では,甲状腺ホルモン合成に対するサイログロブリン(Tg)の作用が甲状腺濾胞構造を通してどのように関与するかを解明するため,生体内での甲状腺上皮細胞の状態を再現することのできる極性培養法を確立し,検討した。マトリゲルでコートしたニトロセルロース膜を細胞支持体としたグラジエントカルチャーシステムを用い,膜の一方に血管内皮細胞,反対側に甲状腺上皮細胞を播種し,内皮細胞側にはウシ胎児血清を含む培養液(培養液B),上皮細胞側には各種増殖因子を添加した培養液(培養液A)を還流することにより,濾胞構造を模した極性培養を行った。灌流培養後,Tgは上皮細胞頂端側の培養液Aにのみ分泌され培養液Bには分泌されなかったことから,この培養系が甲状腺の濾胞機能を再現していることがわかった。続いて培養液AにTgを添加して培養したところ,甲状腺ホルモン産生を亢進するカテプシンKの培養液Aへの分泌が促進された。一方,培養液BにTSHおよびインスリンを添加して培養したところ,カテプシンKの分泌は阻害された。それに対し,リソソーム内で作用するカテプシンB・Lについては,いずれの因子も影響を与えなかった。以上の結果より,Tgは甲状腺上皮細胞の増殖を促進するだけでなく,甲状腺ホルモン合成の調節を直接行っていることが示唆された。そこで,甲状腺ホルモンが実際に基底側に放出されているかを計測したところ,検出感度以下であったため定量的な評価を行うことはできなかった。今後,この培養系をスケールアップすることにより甲状腺ホルモンの定量が可能になれば,Tgの新たな機能とその作用機構が明らかになると期待される。
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