2009 Fiscal Year Annual Research Report
ゲノム不安定性によってもたらされる細胞多能性獲得の新機能
Project/Area Number |
21659066
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
井倉 正枝 Kyoto University, 放射線生物研究センター, 研究員 (40535275)
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Keywords | T1P60ヒストンアセチル化酵素 / iPS細胞 / DNA損傷応答 / 細胞の多能性 / ヒストンH2AX / アセチル化 / ユビキチン化 / 蛋白質ネットワーク |
Research Abstract |
最近、染色体の不安定性が細胞の多能性獲得に重要な働きをしていることが示唆され、DNA損傷応答シグナルの生理的な条件下でのiPS誘導との関連が注目を集めている。TIP60ヒストンアセチル化酵素は、p53などのDNA損傷応答関連因子群と蛋白質ネットワークを形成し、DNA損傷応答シグナルの中心的な役割を担っている因子の一つである。申請者らはTIP60がH2AXのアセチル化とユビキチン化を制御し、ピストンH2AXをクロマチンから放出することを明らかにし、損傷クロマチンの制御を介したDNA損傷応答シグナルを提示した。興味深いことにマウスの細胞においてTIP60は、Embryonic Stem cells(ES cells)の多分化能の維持に関与していることが示されており、これらのことから、TIP60ヒストンアセチル化酵素によって制御される、損傷クロマチンの制御ネットワークが細胞多能性獲得シグナルとなんらかのクロストークがあると予測される。本申請課題では、TIP60ヒストンアセチル化酵素によって制御されるDNA損傷依存的なH2AXの放出の生理的条件下での役割を明らかにし、細胞の可塑性を誘導する新規シグナルカスケードを提示する。このことによりiPS細胞の多能性獲得の分子機構を解き明かすことを目的とする。これまでにTIP60ヒストンアセチル化酵素活性を欠失させたTIP60変異体遺伝子を導入させたマウスMEF細胞においてiPS化が促進されることを見出し、このことからTIP60によるヒストンアセチル化酵素活性がiPS化に対して阻害的に作用することを明らかにした。現在、この結果に基づき、TIP60によってアセチル化されるH2AXのアセチル化部位を変異させたH2AX変異遺伝子を導入したマウスMEF細胞においてiPS誘導がどのような影響を受けるのかを検証している。
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