2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21659082
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
福田 亮 Keio University, 医学部, 講師 (50208972)
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Keywords | NASH / HIF-1 / COX4-2 / 間欠性低酸素 |
Research Abstract |
本年度の研究で明らかになったのは、1)肝細胞由来のHuh7細胞を間欠的な低酸素状態にするとhypoxia-inducible factor(HIF)-1の持続的な活性化が起こる事、2)cytochrome c oxidase(COX)のsubunit 4-2の誘が起こる事、3)ROSの産生が高まる事、4)脂肪蓄積は間欠性低酸素によるROS産生を増強させる事、などである。本研究の目的は生活習慣病の一つとして注目されるnon-alcoholic steatohepatitis(NASH)の発症機序を解明する事である。NASHの発症序にはROSが関与する事が知られており、本研究はこのROS産生が低酸素でされる転写子HIF-1によるCOX4のisoformめ一つであるCOX4-2の過剰発現によるという仮説を検証するものである。COX4-2は低酸素で誘導されて電子伝達を促進することでROS産生を抑制するが、酸素がある状態では逆にROS産生を促進する。持続性低酸素ではHIF-1の発現は4時間をピークに低下するが、間欠性低酸素では持続的にHIF-1の発現が維持される。この結果ターゲット遺伝子であるCOX4-2の発現が促進されることで肝細胞でのROS産生が促進されると考えられる。NASHは脂肪肝をベースに発症するが、本実験でも脂肪酸の投与により人工的に脂肪蓄積させた細胞では低酸素でのROSの産生が高いことが示された。これらの事実はNASHの発症に肥満などによる肝臓での脂肪蓄積をベースとして、睡眠時無効吸発作など間欠性低酸素状態が起こる事でHIF-1が持続的に誘導され、COXの構成に変化が起きる事でROSの産生が高まる事がNASH発症の一因である可能性を示唆している。この結果はまた、HIF-1の阻害剤の使用でNASHの発症を抑制できる可能性を示しており、新しい治療法開発の可能性に繋がると思われる。今後は肝細胞特異的なHIF-1のノックアウトマウスを用いてin vivoレベルでの検討を行う予定である。
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