2009 Fiscal Year Annual Research Report
細胞老化の発癌制御に関する2面性とその調節に関する研究
Project/Area Number |
21659083
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Research Institution | Japanese Foundation For Cancer Research |
Principal Investigator |
原 英二 Japanese Foundation For Cancer Research, 癌研究所がん生物部, 部長 (80263268)
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Keywords | 癌 / 老化 / シグナル伝達 |
Research Abstract |
哺乳動物の正常な体細胞に癌遺伝子の活性化など発癌の危険を伴う様々な異常が生じると発癌防御機構の一つとして知られる「細胞老化」が誘導され、異常細胞の増殖が阻止されることが知られている。しかし、最近、我々は細胞老化の誘導は活性酸素種(ROS)の著しい上昇とそれに伴う多核・多倍体化を促進し、良性腫瘍から悪性腫瘍への転換を促進している可能性があることを見出した。そこで、条件的に不死化したヒト線維芽細胞株を用い、細胞老化を誘導後、細胞増殖を再開した細胞クローンを単離した。それらの細胞クローンのうち足場非依存的増殖性など、もとの細胞(条件的に不死化したヒト線維芽細胞株)が持っていなかった悪性腫瘍細胞としての形質を獲得している細胞クローンを選び、それらの細胞クローンで共通して起こっている遺伝子発現変化をマイクロアレイを用いて探索した。その結果、発現レベルが著しく上昇しているものと低下している遺伝子群が存在することを見出した。興味深いことにそれらの遺伝子の中には染色体分配に関与しているものが複数含まれていた。更に興味深いことに、悪性腫瘍細胞としての形質を獲得している細胞クローンでは染色体の数がほぼ倍化しており、染色体の分配異常が発癌と密接に関与していることが強く示唆された。今後は同定した染色体分配に関与する遺伝子の発現異常が細胞老化の形質維持や悪性腫瘍化への転換にどのように関与しているかについて解析を行う。
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