Research Abstract |
喘息の病態が免疫応答のアンバランスによることが一因である事に注目し,病変部位での免疫環境を是正する事で,喘息の治療,予防を試みる新しい遺伝子治療法の開発に向けて研究を行った. 自己増殖能力を欠失させたパラインフルエンザ2型ウイルスベクターに,mIL-4-A(マウスIL-4アンタゴニスト),Ag85B(抗酸菌由来分泌蛋白質)の各遺伝子を挿入し,マウス気道での各遺伝子産物を発現させ,病変部位を,異なる経路によりTh-2優位の環境の是正を行った.Th-2優位のOVA誘発喘息モデルマウスにおいて,mIL-4-A,Ag85B投与群は,いずれも肺胞洗浄液中の細胞数,蛋白濃度の減少が認められ,気道抵抗の改善が考えられた.また,肺胞洗浄液中IL-5,IL-13の減少,所属リンパ節でのIL-4の減少,INF-γ増加が認められた.これらの事より,病変あるいは周囲でのTh-1/Th-2バランスの是正が行われている可能性が十分示唆された.さらに血清中のOVA特異的IgEの減少が認められ,喘息の初期反応の緩和にも効果が期待できる結果であった.これらの結果を受け,慢性気道炎症の程度を病理組織学的に検討した.その結果,Th-1/Th-2バランスの是正が認められた群では,気道上皮の再生性変化は認められたが,炎症細胞浸潤は明らかに減少し軽減が認められた.これらから免疫環境の是正は,炎症期間の短縮効果,炎症範囲の縮小効果,あるいは直接的な炎症反応の減弱効果のいずれか,あるいはこれらの相乗効果が十分期待できる結果であった.
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