2009 Fiscal Year Annual Research Report
抗がん剤多剤同時測定法確立と情報科学の融合によるがん薬物療法の個別最適化戦略
Project/Area Number |
21659138
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
寺田 智祐 Kyoto University, 医学研究科, 副薬剤部長 (10324641)
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Keywords | 分子標的抗がん剤 / 患者個別化投与設計 / 血中濃度モニタリング / ソラフェニブ / スニチニブ / 高速液体クロマトグラフィー / 血液透析 |
Research Abstract |
分子標的抗がん剤ソラフェニブ、スニチニブは良好な治療成績を示すが、皮膚障害等の副作用が高い頻度で発現するため、標準投与量での治療継続が困難な症例が多い。本研究では患者個別の投与設計法確立の基盤とするため、両薬物の血中濃度測定法を新規に確立した。また、確立した測定法を用いて、透析施行患者におけるソラフェニブ血中濃度を測定し、透析施行患者へのソラフェニブ投与の認容性および有効性について明らかにした。 1) ソラフェニブおよびスニチニブの血中濃度測定法の確立 ソラフェニブおよびスニチニブは血液中では主に未変化体および活性代謝物として存在するため、両化合物が薬理効果および副作用発現に寄与していると考えられている。本研究では、HPLC法により、ソラフェニブ、スニチニブおよびそれらの活性代謝物の測定系を確立した。標準試料から作成した検量線は、ソラフェニブおよびその活性代謝物では0.1-20μg/mL、スニチニブおよびその活性代謝物では10-500ng/mLの範囲内で良好な線形性を示した。以上から臨床上有用な血中濃度測定法を確立した。 2) 透析患者におけるソラフェニブ血中濃度の測定 透析施行患者へのソラフェニブ使用経験は乏しく、安全性および有効性は十分に確立されていない。本研究では透析施行患者におけるソラフェニブ血中濃度を内服直前および透析前後に経時的に測定した。標準投与量での投与開始から9日目および183日目におけるソラフェニブ血中濃度は、非透析患者における既知の血中濃度とほぼ同様であった。透析前後における血中濃度の低下は認められず、ソラフェニブは透析により除去されないことが示唆された。投与開始から約6ヶ月間に副作用発現は認められず、投与開始から約2ヶ月後のCT検査では腫瘍増殖の抑制が認められた。 以上から透析施行患者におけるソラフェニブの認容性および有効性が証明された。
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