2010 Fiscal Year Annual Research Report
地理情報システム(GIS)による救急需要分析に基づく包括的救急管理の構築
Project/Area Number |
21659165
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Research Institution | Soka University |
Principal Investigator |
佐々木 諭 創価大学, 学士課程教育機構, 准教授 (70463974)
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Keywords | 地域保健 / GIS / 救急 |
Research Abstract |
【目的】地域住民の高齢化は救急需要の急増をもたらし、救急隊の現場到着遅延と救命率低下が危惧されている。新潟県の平成19年から過去10年間の救急出動は65%増加し、現場到着に要する時間は6.2分から7.5分に伸びた。所要時間別割合によれば、現場到着時間が10分以上要した件数が24%、収容時間に関しても1時間以上かかっている割合が約8%あり、所用時間の格差が顕著となっている。本研究は、地理情報システム(GIS)を用い、(1)新潟市における救急現場までの到着時間と現場から病院までの到着時間の地域格差を明らかにし、(2)現場到着時間、病院搬送時間に影響を与える因子を特定し、時間推定モデルを作成、(3)時間推定モデルに基づき、救急病院を設置した場合の地域格差の是正を検証する、ことを目的とする。【方法】本研究は、新潟市を調査対象とし、新潟市消防局より提供された平成20年1月~12月までの救急出動記録27242件(高度救急隊を除く)の中から、住所照合により地理座標が特定され、かつ実際に病院まで搬送されたケース24583件を用い以下の分析を試みた。(1)現場到着時間と病院搬送時間から、新潟市内全域の所用推定時間をクリギング法により推定。(2)新潟市内を107区画に分割し、各区画の現場到着と病院搬送平均時間に影響を与える要因を回帰分析を用いて特定。(3)救急搬送時間推定モデルを用い救急病院の設置による格差変化シミュレーションを行い時間格差の是正を検証する。【結果】現場到着時間、病院搬送時間ともに地域格差が認められ、病院搬送時間のほうがより顕著であった。現場到着時間、病院搬送時間いずれも施設(消防署、救急病院)までの距離が重要な要因となっている。病院搬送時間には地理的要因が関与しており、地理加重回帰分析を用いることで地理的要因を考慮したモデルが作成可能となった。【考察】病院搬送時間の要因は地域によって程度に差があることが明らかとなり、これらの要因を考慮した科学的根拠に基づく保健政策への効果的な応用が可能と考える。
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Research Products
(1 results)