2009 Fiscal Year Annual Research Report
ブレイン・フィンガープリンティングの組織学的解析による生前情報の取得
Project/Area Number |
21659177
|
Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
木林 和彦 Tokyo Women's Medical University, 医学部, 教授 (20244113)
|
Keywords | 異常環境 / 低体温 / 冬眠遺伝子 |
Research Abstract |
本研究はブレイン・フィンガープリンティングに関する基礎研究であり、実験動物を用いて死亡直前に脳に加えられた情報による脳の形態的変化を明らかにし、被害者の生前の脳内情報を調べるための研究へ発展させることを目標にしている。本年度の研究では、寒冷環境に置かれていたか(死亡場所の環境)について脳の変化を調べた。脳を調べることで死亡時の状況が判れば、法医学の実務にも寄与できる。 寒冷ストレスによるc-Fosと睡眠に関係するCIRPの各タンパク質の発現を解析するために、ddY 6週齢雄マウスを4℃、23℃に1、3、6、24時間おいた。寒冷暴露後23℃に戻し6時間経過後、脳及び各臓器を摘出し、ホルマリン固定・ビブラトーム切片を作成し、抗c-Fos抗体、抗CIRP抗体を用いた免疫組織化学を行った。その結果、上記の温度、時間においてはコントロール群と比較して顕著な差は認められなかった。 次に、寒冷暴露によるmRNAの動態を解析するために、c-FosとCIRPの各遺伝子のリアルタイム定量PCRによる発現解析を行った。4℃または23℃に24時間おいたddY 6週齢雄マウスから脳及び各組織を摘出し、総RNAを抽出し、逆転写反応によりcDNAの合成を行った。CIRP、c-Fosに対するプライマーを用いてリアルタイムPCR法を試み、4℃と23℃の各組織におけるそれぞれの遺伝子の発現量を比較したところ、視床領域ではCIRPは約1.5倍、c-Fosは約2倍、後頭葉ではCIRPが約2.2倍、腎臓ではCIRPが約1.5倍、精巣ではc-Fosが約60倍増加していた。寒冷環境によって脳内の特定の部位が活性化され、睡眠に関係するCIRP遺伝子発現が増加していると考えられた。睡眠に関係する遺伝子の増加は凍死の機序とも関係していると推測された。リアルタイム定量PCR法ではその感度の良さから各遺伝子の発現量が定量的に求めることが可能であるため、寒冷による脳の変化を捉えることができた。生前の痛み、恐怖、明暗所などによる脳の変化も調べる予定である。
|