2009 Fiscal Year Annual Research Report
細胞内の銅イオン制御による筋萎縮性側索硬化症の新規治療
Project/Area Number |
21659222
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
小野 真一 Nihon University, 薬学部, 准教授 (20246862)
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Keywords | 脳神経疾患 / 薬学 / 蛋白質 / メタロチオネイン / 銅 |
Research Abstract |
平成21年度は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)モデルマウスのSOD1^<G93A>(変異SOD1マウス)の脊髄組織で細胞内Cu取り込みと排泄に関わるCu輸送体蛋白質の動態を明らかにした。Cuは細胞膜に存在するSteapによりCu^+に還元され、Ctrlにより細胞内へ取り込まれる。取り込まれたCu^+はAtoxlやMT(Metallothionein)と結合し細胞内で利用された後、Atp7a(N)で受け取られAtp7a(C)の形質膜移動により細胞外へ排出される。変異SODlマウスでは責任病巣の1つである脊髄でSteap、Ctrl、Atoxlいずれも週齢依存的に増加していた。これはCu^+の細胞内過剰取り込みをもたらす。一方Atp7a(N)は低下し、Atp7a(C)の形質膜への移動は観察されなかった。Cu^+取り込み過剰状態にも関わらず排泄が低下していることから、細胞内Cu^+蓄積にあることが示唆される。このCu輸送体蛋白質の変化は主に運動ニューロンで観察された。事実、これらの変化に呼応するように脊髄Cu濃度は週齢依存的に依存していた。さらにSteap、Ctrl、Atoxl、Atp7a(N)、Atp7a(C)は変異SOD1マウス脊髄で共凝集体を形成していた。これら一連の変化はwild-type SOD1マウスでは観察されなかった。従来、SOD1変異を有するALSは「変異SOD1が新たに獲得した未知の細胞毒性」により運動ニューロンの死がもたらされるとされてきたが、その本質は不明であった。本結果は、変異SOD1の未知の細胞毒性が、細胞へのCu取り込みと排泄に関わるCu輸送体蛋白質と共凝集し、細胞内Cu恒常性の破綻をもたらすことを初めて示した点で大変意義深いものである。
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