2009 Fiscal Year Annual Research Report
PIG-A遺伝子異変をマーカーとしたヒト造血幹細胞動態の解明
Project/Area Number |
21659236
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
中尾 眞二 Kanazawa University, 医学系, 教授 (70217660)
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Keywords | PNH / 造血幹細胞 / FLAER / FACSCanto |
Research Abstract |
ヒト造血幹細胞の分化経路を明らかにするため、多数の骨髄不全症例について多血球系統におけるCD55-CD59-CD48-血球の推移を観察した。その結果、PNH形質の血球は特定の血球系統の組み合わせを維持しながら、年余にわたって検出され続けることが明らかになった。これは、ヒト造血幹細胞が自己複製能を維持しながら、造血の場依存性に特定の系統の血球を産生し続けるという新たな造血モデルを支持する所見であった。また、PNH型顆粒球の割合から推定されるクローンのサイズと、PNH型血球を認める血球の系統数との間には正の相関がみられることから、ヒト幹細胞においては増殖能力が高いほど、多系統に分化する能力も高いことが示唆された。この結果については現在投稿準備中である。 一方、微少なPNH型血球の検出は、これまではGPI-アンカー型膜蛋白に対するモノクローナル抗体とFACScanを用いて行ってきたが、PNH型血球の割合が0.01%前後のごく微量の場合、陽性か陰性かの判定には経験の多い医師による主観的な判断が必要であった。これを改善するため、抗体の代わりに、すべてのGPI-アンカー膜蛋白に結合する液状fluorescent-labeled inactive toxin aerolysin(FLAER)とFACSCantoを用いる新たなPNH型検出方法を開発した。この方法を用いると、PNH型細胞がFLAER陰性分画に明瞭なクラスターを形成するため、FLAER陰性分画の細胞数を機械的に計測するだけで、主観的な判断なしに微少なPNH型顆粒球・単球を定量することが可能であった。細胞処理の手順や種々の設定を至適化し、その条件で健常者74人の末梢血を検索したところ、FLAER-CD11b+(PNH型顆粒球)、FLAER-CD33+(PNH型単球)の割合がそれぞれ0.001%、0.002%を超える例は皆無であった。この新たなPNH型血球検出方法については現在特許出願準備中である。
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