2010 Fiscal Year Annual Research Report
高い移植片生着効率を示すSIRPA変異型遺伝子導入新規ヒト化免疫不全マウスの開発
Project/Area Number |
21659239
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
赤司 浩一 九州大学, 大学院・医学研究院, 教授 (80380385)
|
Keywords | 造血幹細胞 / 癌幹細胞 / 異種移植モデル / 免疫不全マウス / マクロファージ寛容 / SIRPA / CD47 |
Research Abstract |
造血幹細胞、がん幹細胞研究を進めるためには、幹細胞同定のためのアッセイ系の確立が必須である。これまで、ヒト造血幹細胞のアッセイ系として種々の重症免疫不全マウスを用いた異種移植の系が開発されてきた。いずれもT、B細胞を欠損したNOD/SCIDマウスを基本として、さらに免疫不全のための修飾を加えたものである。IL2RγをノックアウトしたIL-2Rγnull-NOD/SCID(NOG)ストレインでは、ヒト造血細胞の生着効率や多系統への分化能が著しく改善されたが、欠点のひとつは、繁殖能力が弱くラインの維持が難しいことである。そこで、まず我々は、C57/BL6バックグランドで、なおかつNOGラインを越える異種免疫寛容の導入を目指した。マクロファージ上に発現するSIRPAとそのリガンドであるCD47との結合は自己認識に用いられているが、我々は、NODライン特有の異種移植片寛容の原因がSIRPA遺伝子多型にあり、ヒトCD47とレシピエントマウスSIRPAの結合強化によりNODバックグラウンドを超える異種移植寛容の導入が可能であることを見出した(Nat Immunol 8;2007)。我々は新たに、C57/BL6バックグランドでRag2およびIL2Rγを欠損したマウスに、NOD型SIRPA変異を導入した免疫不全マウスB6.Rag2nullIL2RγnullSIRPANOD/NODライン(BRGS)を樹立した。このBRGSマウスにおいては、T細胞のリークがなく、NOD型SIRPを持つために、NOD/SCID比較して良好なヒト造血細胞生着がみられ、B6ラインであることから、高い生存・繁殖能力もみられた。この結果は、CD47-SIRPAの結合強化により、さらにヒト細胞の生着効率の改善が期待できることを示している。このBRGSラインをベースに、実験を開始し、アッセイシステムは今後さらに改良を重ね、最新免疫不全マウスラインを適宜使用する。さらに、マウスマクロファージによるヒト移植片寛容を強化するために、SIRPA遺伝子多型の解析を平行して行い,ヒトCD47と強く結合するためのSIRPA変位部位を計3ヶ所見出しており、その変位をすべて導入した人工的ヒト型SIRPAマウスの作成中である。
|