2009 Fiscal Year Annual Research Report
メタボロミクスによる膵癌特異的代謝物の同定と膵液診断への展開
Project/Area Number |
21659320
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
田中 雅夫 Kyushu University, 大学院・医学研究院, 教授 (30163570)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白羽根 健吾 九州大学, 大学病院, 助教 (10529803)
鬼丸 学 九州大学, 大学病院, 医員 (80529876)
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Keywords | 膵癌 / 膵癌特異的代謝産物 |
Research Abstract |
代謝産物はゲノム情報の最終的表現である形質発現であり、細胞の働きを包括的に理解する時代謝産物の網羅的解析であるメタボロミクスはきわめて重要な意味を持つ。しかし、膵癌の治療抵抗性に関わるRNAの網羅的解析は複数の報告がある一方で、治療抵抗性に関連する代謝産物を同定した報告は現在までない。 私たちは膵癌細胞株SUIT-2、capan-1のGemcitabine耐性株より代謝産物を抽出し、質量分析計LCMS-IT-TOFで代謝産物のprofilingを行った。得られた網羅的情報をそれぞれの親株代謝産物情報と比較することで治療感受性関連特異的代謝産物を同定した。Gemcitabine耐性SUIT-2では親株と比較し陽イオンモードで25の物質が有意に上昇し、46の物質が有意に減少、陰イオンモードでは6の物質が有意に上昇し、8の物質が有意に減少していた。同様に、Gemcitabine耐性capan-1では陽イオンモードで9の物質が有意に上昇し、15の物質が有意に減少、陰イオンモードでは1の物質が有意に上昇し、10の物質が有意に減少していた。両者のGemcitabine耐性膵癌細胞株で共通して上昇していた物質は1つ、減少していた物質は6つであった。これら物質は小数点以下5桁の精密分子量(質量/電荷費)として表現され、この質量データをもとにオンライン上データベースを基に化合物の絞り込みを行い複数の候補化合物が得られた。加えて、当教室並びに共同研究をしている先端医療医学教室で保有する約600の化合物(化学物質)をLCMS-IT-TOFにかけ、スペクトルパターンをprofiling、データベース化を行った。現在はこれらの結果と照らし合わせてGemcitabine耐性膵癌細胞株で変動する代謝物の同定を進めているところである。 また同様に、樹立済みであるCFPAC-1、SUIT-2のRadiation耐性株でも代謝物質の同定を試みたが、両膵癌細胞株において共通して増減した物質は一つもみられなかった。 以上の結果より、抗癌剤耐性にかかわる癌関連分子・代謝経路を同定する下地はそろいつつある。膵癌の治療効果増強を最終目標として研究を継続する。
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