2010 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子発現プロファイリングを応用した膵癌に対する新規ペプチド免疫療法の開発
Project/Area Number |
21659325
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
山上 裕機 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (20191190)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷 眞至 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (60236677)
川井 学 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (40398459)
廣野 誠子 和歌山県立医科大学, 医学部, 学内助教 (60468288)
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Keywords | 免疫療法 / 包括的ゲノム解析 |
Research Abstract |
膵癌は予後不良な癌腫のひとつであり、新規膵癌治療を目指し膵癌の転移・浸潤に関与する遺伝子群の検索が多くなされてきた。膵癌切除例ではリンパ節転移が唯一の予後不良因子であることが報告され、膵癌リンパ節転移関連遺伝子の同定は予後予測マーカーのみならず新規膵癌治療の分子標的になり得ると考え、われわれは膵癌切除凍結サンプルを用いた網羅的遺伝子発現解析により膵癌リンパ節転移遺伝子を検索した。 平成21年度には膵癌切除凍結サンプル30例を用い、組織を9μmに薄切した後、膵癌腫瘍部を選択的にマイクロダイセクションし、そのRNAを抽出し、網羅的遺伝子発現解析を施行した。網羅的遺伝子発現解析はAffymetrix社のGeneChip Human U133 plus 2.0 arrayを用い、マイクロアレイデータをDNA Chip softwareを用いて、Normalizationした後、リンパ節転移陽性群15例と陰性群15例で比較検討した。その結果リンパ節転移陽性群で高発現した遺伝子29個と低発現した遺伝子17個を同定した。さらに、これらの遺伝子群がタンパクレベルでもリンパ節転移に関与する遺伝子群かどうかを立証するべく、免疫染色解析を行った。その結果4遺伝子(AP2α, MUC17,LI-cadherin, XK)が、リンパ節転移陽性群と陰性群で差を認めた。 本年度は、これらの4遺伝子の臨床学的意義を同定するべく、200例の膵癌サンプルで免疫染色解析を施行し、臨床病理学的因子を含めた多変量解析を行ったところ、これら4遺伝子のうちAP2α低発現とMUC17高発現の2遺伝子が、膵癌のリンパ節転移に有意に関与していることが分かった。さらに、AP2α低発現群とMUC17高発現群は、膵癌切除患者の予後不良因子であることが同定できた。 次にこれらの遺伝子群の分子学的機能を解明するべく、In vitroにおける浸潤・転移機能を解析を行った。MUC17のshRNAを膵癌細胞株(PK9)にtransfectし、MUC17の発現を十分に抑制した。Invasion chamber解析では、MUC17をdownregulateした細胞ではコントロール群より優位に浸潤能が抑制でき、さらにMigration assayにおいても、コントロール群よりも優位にmigration levelの低下を認めた。このことからMUC17は膵癌において浸潤・転移に関与する遺伝子であることが分かった。 今後、上記の結果とさらなるIn vitroおよびIn vivo実験を行い、MUC17タンパクからHLA-A24に結合するペプチドを同定して、ワクチン療法に向けた基礎的検討を行っていく予定である。
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Research Products
(5 results)