2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21659342
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
天野 敏之 Kyushu University, 大学病院, 助教 (70448413)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中溝 玲 九州大学, 大学病院, 助教 (80529800)
橋口 公章 九州大学, 大学病院, 助教 (80448422)
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Keywords | 水頭症 / 神経幹細胞 |
Research Abstract |
3週齢のWisterラットの大槽に25%Kaolin溶液を0.05ml注入することで、あるいは全脳照射(1, 2, 3Gy)を行うことで、水頭症モデルの作製に成功した。脳室の拡大は14日目ですでに認められ、以後も脳室の拡大が増悪していった。放射線照射後の水頭症ラットの体重に大きな変化は認めなかったが、脳重量は照射後60日で有意な低下を認めた。また脳室下帯の細胞数を計測したところ、脳室下帯の総細胞数は照射後7日目にはコントロール群の70%前後にまで減少しているが、14目にはコントロール群と同程度にまで改善していた。その中で神経幹細胞数の比率をnestin抗体による免疫組織染色で評価したところ、放射線照射後2日目までは神経幹細胞の脳室下帯総細胞数に対する比率がコントロール群の70%前後にまで低下するが、7日目から14日目にかけてはコントロール群の150%以上にまで増加していた。このことは、放射線照射により神経幹細胞がある程度選択的に障害されるが、反応性に神経幹細胞の増殖が誘発され、脳室下帯の細胞数を維持する方向へ働いていることが示唆された。これは脳室下帯の可塑性を表していると考えられ、放射線照射に対する微小環境の回復・維持に神経幹細胞が関与していることが示唆された。しかしながら水頭症ラットではその後の脳室拡大に伴い脳室下帯の縮小を認め、同部の総細胞数の低下および神経幹細胞数の低下が認められた。これは水頭症の増悪に伴い、脳室下帯の可塑性が消失した可能性がある一方、脳室下帯の不完全な回復に伴い、水頭症が増悪した可能性が示唆された。Kaolin溶液の大槽内注入により髄液の吸収障害を惹起する水頭症モデルと、放射線照射により誘発される水頭症モデルではその病態が異なる。本年度はこの違いに着目し、神経幹細胞が水頭症に及ぼす影響について検討し、水頭症の病態と神経幹細胞の役割について考察する。
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